エンジンは2.5リッターと3.5リッターで、いずれもCVTを組み合わせたV6。3.5リッターは乗るとさすがに速いが、僕なら迷わず2.5リッターを選ぶ。「OMOTENASHI」というコンセプトのもと「かけがえのない上質な時間」を目指したティアナにとって、VQ35DE型ユニットは強力すぎると思えたからだ。先代の3.5リッターモデルのようにシャシーがエンジンに明らかに負けているということはない。が、アクセル操作に対するパワーの立ち上がりはもっと滑らかにして欲しい。決して過敏といえるほどのレベルではないのだが、ジャガーのV8のような「あり余るパワーを普段は余裕としてリザーブしておき、いざというときにだけ開放する」という境地には至っていない。その点、2.5リッターは必要にして十分以上のパワーを持ちながら、常にリラックスして走れる。ティアナには、このぐらいがちょうどいい。
かけがえのない上質な時間にとって大切な乗り心地。これに関してはまずまずのレベルと報告しておく。とくに大きく尖った衝撃が入ったときの“いなし”はキッチリ作り込まれている。ただしショートピッチのうねりが連続する路面ではブルブル感が目立ってくる。もっとフラットな乗り心地が手に入れば上質感は増すはずだ。試乗車は2.5リッターを含め全車17インチタイヤを履いていたが、16インチならかなり改善されるというのがエンジニアの弁。ならばどうして16インチ仕様の試乗車を用意してくれなかったのだろう…。
売りのひとつであるインテリアに関しては、ウッド調パネルにソフトパッドをフローティングマウントした(ように見える)はずだったデザインが生産技術の限界からフローティング感に欠けることや、運転中何度も目をやるルームミラーがマーチと同じような安手のものであること、他車と共用したエアコン操作パネルのデザインが全体のデザインに調和していないことなど、不満はいくつかある。あるのだが、トータルとしてはとても雰囲気のあるインテリアだ。
キャラは薄まったが、ティアナはとてもよくできたセダンだ。とくにシートの座り心地は抜群。先代から受け継いだ助手席のオットマンも快適だ。そして何より、猫も杓子もスポーティーをキーワードにする時代、ハンドリングを含め、癒しをキーワードにクルマ作りをしているのが嬉しい。なんか最近疲れてるなぁ…そんな風に思っている人にとって、ティアナは見逃せない一台だ。