北京市公安局は、市民全員にあてて、外出を控えるよう注意を促すショートメールを流した。だが、それでも外出せねばならない人は、マスクをし、その上にマフラーなどで顔を覆う重装備だ。彼らは、日中というのに視界はほぼゼロなので、手探りで歩くしかない。
北京っ子は、朝会えば「早!」と挨拶を交わすが、皆ノドが腫れ上がっているので、声を出す者もない。目も開かないほど痛いし、鼻もヒリヒリする。髪までチクチクしてきて、頭が締めつけられるように痛む。
衝撃の実験映像
1月14日、アジア開発銀行は、「中華人民共和国国家環境分析」を発表した。これによれば、中国の500都市のうち、WHO(世界保健機関)の大気基準を満たしている都市は、ほぼゼロだという。世界の「汚染都市ワースト10」のうち、何と7都市が中国国内だ。
同日、中国中央テレビは、北京大学医学部の衝撃的なデータを発表した。それによれば、昨年の北京、上海、広州、西安の4都市の甚大な空気汚染によって、今後8500人以上が早死にするだろうという。
思えば昨年も、同時期に北京で同様のパニックが起こったが、共産党大会を控えて権力闘争にお忙しい「中南海」(最高幹部の職住の地)の方々は、知らぬ顔をした。そもそも森と湖に囲まれた中南海だけは、空気汚染とは無縁だという声も聞かれる。
この大気汚染パニックの最中、中国では、偽フカヒレショックも起こった。
昨年末、浙江省の消費者保護委員会が杭州、寧波、温州などの高級レストラン1000店舗以上のフカヒレを調べたところ、何と約96%の店のフカヒレから、原料であるはずのサメのDNAが検出されなかった。
その後、全国的に調査したところ、多くのフカヒレが偽物で、しかも発がん性物質を含む化学物質で作られていることが判明した。中国中央テレビが、70度のお湯に30分間漬けたら溶けてなくなった偽フカヒレの映像を流した際には、全国に衝撃が走った。
だが多くの庶民は高級食材のフカヒレなど、そもそも食べたことがないため、「金持ちだけが唯一かかるがんだ」と皮肉るネット上の書き込みも見られた。
日本に入って来ている中国直輸入のフカヒレも、当然ながら要注意である。
「週刊現代」2013年2月2日号より
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