特集ワイド:社会文化会館「三宅坂」解体へ 夢、館とともに去りぬ

毎日新聞 2013年01月29日 東京夕刊

社民党本部の思い出を語る福島瑞穂党首。2〜4階にはバルコニーがあり、政権獲得時には国民に手を振る場と伝えられる=東京都千代田区で久保玲撮影
社民党本部の思い出を語る福島瑞穂党首。2〜4階にはバルコニーがあり、政権獲得時には国民に手を振る場と伝えられる=東京都千代田区で久保玲撮影
歴代の委員長らの写真が掲げられた社民党党首室から執務机を運び出す業者=2013年1月26日、武市公孝撮影
歴代の委員長らの写真が掲げられた社民党党首室から執務机を運び出す業者=2013年1月26日、武市公孝撮影

 ◇勝利に酔うはずのバルコニー、「国民」に開かれた大ホール 社民党も一新できるか

 社民党(旧社会党)本部が入る「社会文化会館」(東京・永田町)が老朽化に伴い、取り壊される。55年体制の一翼を担った政党の歴史を見守ってきた会館は、近くの坂の名から「三宅坂」と呼ばれてきた。党勢が衰退している時だけに、党関係者の「さらば、三宅坂」という言葉には悲哀がこもる。【瀬尾忠義】

 一歩足を踏み入れて、ここは昭和だ、と思った。

 引っ越し前の18日、福島瑞穂党首に会館内を案内してもらった。1階ホールには、1960年に刺殺された元社会党委員長、浅沼稲次郎氏の胸像が据えられ、来館者を迎える。エレベーターは1階に来た時、「ガタン」と音をたてた。

 会館は64年、東京五輪の年に建設された。地上7階、地下1階。党本部の中核は4階で党首室、党事務局、幹事長室、会議室がある。自民党本部より2年も早く建設されたが、今、廊下は薄暗く、引っ越し前で会館内が閑散としているためか足音が響く。

 党首室の入り口側の壁には歴代委員長らの写真が並んでいた。「党首室では一人になる時間が多く、人事や重要案件を考えてきた。椅子に座ってふっと顔を上げると写真が目に入る。いつのころからか『先輩方に見守られている』と安心するようになりました」と福島氏。5〜7階を占めるのは「三宅坂ホール」(688人収容)。党大会を開催したり、労働組合や団体などに貸し出されたりした。自慢はスタインウェイ社のグランドピアノ。地下1階にはかつてレストランがあった。

 映画やドラマのロケ地としても使われた。「事件は会議室で起きてるんじゃない」というせりふで有名な映画「踊る大捜査線」のロケでは会館の会議室が使われた。

 旧首相官邸など政治の舞台を考察した「権力の館を歩く」の著者、御厨(みくりや)貴・東大名誉教授(政治史)は文化会館をこう位置付ける。「大ホールやレストランは外から人を呼び込むためのもの。労働組合の人々だけが集まる拠点ではなく、国民に開かれた政治を目指すという党を象徴する建物だった。2〜4階のバルコニーは社会党が政権を取った際、建物前で万歳をする支持者に党幹部らが手を振るための場所との神話がある。党にとってバラ色の夢があった館だった」

  ■

 時代は移り変わり、党名は96年に変更された。東日本大震災後、会館の耐震性が問題になり、党は「三宅坂ホール」を即座に使用禁止にした。建て替えを探ったが、資金面や国有地にあることによる建築制限などから断念した。党が約1億数千万円をかけ、会館を解体して更地にして国に返還するという。

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