安倍首相の演説案は、まず「日本の国益」として「海の安全」と「日米同盟」とを掲げ、インドネシアなど東南アジア諸国との連帯の重要性を強調していた。その上で5つの原則として「思想や言論の自由」「海洋での法と規則の尊重」「自由な交易と投資」「日本と東南アジアとの文化交流」「同じく若い世代の人的交流」を挙げていた。
演説案は日本とインドネシアの「交流」の実例として、日本の看護師試験に受かったインドネシアの若い女性が東日本大震災の被災地で活躍したケースや、ジャカルタの劇団が「大好きな日本へ、桜よ」という日本語の歌を激励に合唱したケースをも伝えていた。
演説の内容を報道したウォールストリート・ジャーナルの記事は「日本が米国との同盟を最重視しながら東南アジア諸国との連帯も強化し、アジアの海が軍事力ではなく、国際規範により管理されることを強く訴えたのは、中国の好戦的な海洋戦略への懸念の反映である」と総括していた。安倍首相がジャカルタでこうした演説を計画したことは明らかに日本とインドネシアの年来の友好や信頼を示す、と同記事は指摘するのだった。日本とインドネシアの連帯の背後で、中国の強硬な姿勢に対する共通した防御の構えが明らかに浮かび上がったのである。
日本が“普通”の国になることを望んでいる
両国の緊密な関係を証するかのように、安倍首相がこの「失われた演説」の予定と同じ日にインドネシアのユドヨノ大統領と会談した際、「日本が憲法を改正し、国軍の創設を可能にし、集団的自衛権も解禁する」という方針を伝えたという報道が日本の各新聞で22日に流された。ユドヨノ大統領はそれに反対することなく、理解を示したという。
そもそもインドネシアは日本の軍備増強には大賛成なのである。
安倍晋三氏が前回の首相だった2006年10月、当時のインドネシアのユウォノ国防相はロイター通信のインタビューで次のように語っていた。
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