昨年11月上旬、米国が景気回復に伴って金融政策を引き締めれば円安となり、日本は未曾有のインフレに直面、日本国債の価格は暴落し日本経済は破綻の危機に直面するという厳しいシナリオを『円安恐慌』という本にまとめて出版、静かな話題を呼んでいます。円安がどう進み、日本はにいかなる事態に陥るのか聞いた。
安倍晋三新政権は、選挙の時から日銀法を改正してもさらなる金融緩和を実施しデフレ脱却を目指すとしてきたこともあり、円は昨年12月から既に10%ほど円安に振れています。
菊池:日本はどこかで円安になり、その場合は大変な事態に陥る――。資産運用の仕事を続けてくる中で、長らくそういう危機感を持っていました。『円安恐慌』はそうした僕の見方が少数意見ではあるが、おもしろいということで出版に至ったわけで、別に「アベノミクス」を狙ってあの本を書いたわけではありません。ただ、思いのほか早く円安が到来した、という感じです。
為替レートは日本だけでコントロールできるものではありません。相手があることです。日本にもできることはありますが、相手の米国がどういう状況かで決まる。現在、安倍政権がやっているのは、米国の事情が変わらないことが前提で、日本が「円高から円安に持っていこう」、そのために金融緩和をしようという考え方です。
この約2カ月はドル円で見れば「円安ドル高」になっている。他通貨で見ても円の独歩安になっている。円安が牽引する形で円安ドル高になっているわけです。
しかし、僕が当初、想定していた円安へのきっかけは本に書いた通り、米国の景気回復でした。米国の景気が回復してくれば、米連邦準備理事会(FRB)は2008年の金融危機以降続けてきた金融緩和策をやめ、引き締め策に転じるでしょう。米国が資金の供給量を引き締めれば当然、円はドルに対して安くなる。これは日本にとって、制御不能な円安が進行する可能性を意味します。
ところが今浮上してきているのは、米国が、景気が回復しなくてもこの金融緩和策を縮小する可能性が出てきているということで、その結果として日本が制御不能な円安時代に突入しつつあるということです。
制御不能な円安とは、日本の側ではどうすることもできない円安を意味するのだと思いますが、なぜそうした円安が進みそうだとみているのでしょうか。
今年1月3日に発表になったFOMC議事録に驚愕
菊池:どういうことか説明しましょう。昨年12月11〜12日、米国の金融政策を決めるFRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれました。
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