■「スタジアム嘆願Tシャツ」をオリジナルデザインで
〜MITOYA sportの三戸兄弟〜
専用スタジアムがほしい、という思いをTシャツに託した人がいる。広島のスポーツショップMITOYA sport(ミトヤ スポルト)のオーナーで、サンフレッチェ広島サポーターURSUSの三戸兄弟だ。
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左は弟の雅貴さん、右が兄の寛光
さんです。 |
そもそものきっかけは、サンフレッチェ広島の広報誌「紫熊倶楽部(SIGUMA CLUB)2003年8月号」の記事に、「専用スタジアムが必要なんだ、という声がサポーターの方から聞こえてこない」というくだりがあったことだった。
記事は、広島に専用スタジアムを必要とする声が、市や県・財界から上がっているという内容で、先の発言は、広島市議会議長・平野博昭氏が取材で語ったものだった。
「だったら、やってやろうじゃん」それを読んだ三戸兄弟の行動は早い。なんと2ヵ月後には、「スタジアム嘆願Tシャツ」を作り上げてしまった。シンプルなデザインのこのTシャツ、すでに100着以上は売れているという。URSUSでは、サンフレッチェ広島の応援ツアーなども手がけているが、その際にも買っていく人がいるようだ。
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専用スタジアム嘆願Tシャツ |
三戸兄弟は、2003年3月にMITOYA sportを開店する以前、東京に住んでいた時期があった。その頃のサッカー観戦で、やはりサッカー専用スタジアムは臨場感がすばらしいと感じたそうである。また、当時FC東京を応援していた縁から、植田朝日とも親交があった。2003年3月の開店当初から今に至るまで、ULTRAS御用達の「ボンボネーラ」と提携しており、コラボレーションデザインTシャツなども販売している。
「僕らもこれから応援に行くんで」日本代表対スロバキア代表の親善試合の当日、兄弟は、広島広域公園駅の脇に出店し、代表のユニフォームやマフラーなどを販売していた。しかし、キックオフにはビッグアーチに駆け込んで、いちサポーターとして試合を観戦するという。趣味と実益を兼ねているようで、実にうらやましい。また、こんなサッカー好きが広島のサッカーを底辺から支えているのだということも実感できた。
求めているスタジアム像は、どこに建設したらよいかという点も含め、細かく見ていけば意見が分かれるところだろう。しかし、およそサッカー好きなら、専用スタジアムのよさに異論はないだろうと思う。それでは、広島の一般の人は、サッカー専用スタジアムについてどう思っているのだろうか。
■「Eタウン」アンケート 半数近くが「広島にサッカー専用球場は必要」
コムニストの神足裕司(こうたり・ゆうじ)といえば、漫画家の西原理恵子と手がけたグルメ本「恨ミシュラン」などが思い出されるが(って、ちょっと古いか)、実は彼は広島県出身であった。「Eタウン(RCCプロジェクト)」という地元ラジオ番組のキャスターとしても知られている、らしい。神足氏は、ラジオで福岡・博多の森球技場を例に出しながら、サッカー専用スタジアムの必要性を訴えたそうである。下記は「Eタウン」で取ったアンケートをメールマガジンで紹介したもの。これによると、半数近くの人が広島にサッカー専用が必要と回答している。
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「広島にサッカー専用球場は必要か」
・必要……47% ・不要……32% ・わからない……21%
必要だと思う理由(複数回答可)
・迫力感が違う……31%
・プロとしてホーム球場が必要……30%
・広島市のシンボルとして……25%
・公約にあったから……7%
・他球団が持っているから……7%
(Eタウンクラブ メールマガジン専用サイト 2003年3月22日)
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ちなみに、『公約にあったから』とは、秋葉忠利広島市長が就任前の公約として、広島市にサッカー専用スタジアム建設をうたっていたことを指している。もっとも、秋葉市長は、後日になって「あれは個人的に支援するという意味だった」と公約を翻す発言をしているようだ。このサイトでは、市長について『正直、ブラジル誘致ができなかったことはかなり悔しかったようで、専用球場ができた際はぜひ、という思いを感じました』などと2002年ワールドカップのキャンプ地招致の失敗を引きずっている点を暗にほのめかしていて、ちょっぴり笑えたりする。
■情報交換の場を
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スタジアム推進プロジェクト事務所 |
今回、このレポートを書くにあたって感じたのは、広島では、推進プロジェクトを立ち上げてみたものの、一般の人も巻き込んだ形での「サッカー専用スタジアムの必要性」のアピールがあまりなされてこなかったのではないか、ということだった。
千葉の蘇我に建設中のサッカー専用スタジアムについては、ジェフ市原の本拠地広域化(市原→市原+千葉)とのからみもあり、チームやサポーターも加わったかたちで論議が進められた。しかもその進捗については、随時ホームページやタウン誌で伝えられていた。決定までの過程でいくつか紆余曲折はあったものの、こうした情報・意見交換の場が設けられたことは画期的なことだったと思う。
広島の推進プロジェクトでも、建設地が内定したら、こうした場を設けることも考えていたのかもしれないが、そこまでいきつく前にペンディングになってしまっているのはもったいないことだと思う。もちろん、広島に住む人にとって、サッカーが生活のすべてではないし、財政難も深刻な問題だろう。けれども、そうした問題も含めて、もう少しまとまった形で、サポーターや一般に向けた中間報告の場があってもいいのではないか。そんな風に思える。
「推進プロジェクト」事務所は、発足当初は3人が常駐していたそうだが、最近は電話をしても誰も出ない。コールをし続けると、やがてサンフレッチェ広島の事務所につながるようになっている。事務局長の今西和男氏は、サンフレッチェの事務所にいるようだ。五日市の埋立地利用について、県から何らかの回答があれば、氏もまた動くという。まだこれで終わりだとは思いたくない。秋頃に、また連絡を入れてみようと思っている。
【参考】
・MITOYA sport(ミトヤ スポルト)
広島市中区本通9-5-3F TEL:(082)545-6800 [取次]
URL <http://www.ursus2002.net/>(Officail Shopとして紹介)
・RCCプロジェクト「Eタウンクラブ」メールマガジン専用サイト
<http://www.rcc.net/e-town/mm/>
・中国新聞
<http://www.chugoku-np.co.jp/>
・サンフレッチェ広島情報誌「紫熊倶楽部」(SIGUMA CLUB)
<http://www.sigmaclub.com/>
(松本 佳世子)
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