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ピッチの風

「熱いスタジアム」が生み出す至福のサッカー
編集委員 武智幸徳

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2011/6/19 7:00
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 今季のJリーグは名古屋や鹿島、G大阪、浦和といった上位陣の常連を尻目に、格下と思われた柏、仙台の奮闘が目立つ。J2から昇格してきたばかりの柏は10試合を消化した時点で堂々の首位を走り、東日本大震災で被災した仙台も2位につけている。

■選手とファンが一つになって喜び合う

 この先、試練はたっぷりと用意されているのだろうが、両チームに思わず肩入れしたくなるのは「熱いスタジアム」という共通点を持っているからである。

 6月15日、ホームのユアテック・スタジアム(以下ユアスタ)で仙台がG大阪に2―1で競り勝つ試合を見た。震災の影響でナイトゲームができず、平日(水曜日)の午後2時キックオフという集客には不利な条件。それでもスタジアムには1万4519人の観衆が詰めかけ、スタンドのほぼ8割方を埋めた。

 黄色いユニホームに身を包んだ仙台サポーターの熱狂は86分の赤嶺真吾の勝ち越しゴールで最高潮に達した。選手とファンが一つになって喜び合う姿に間近で接することは、スポーツ観戦の楽しみの一つである。部外者であるこちらまで心洗われる思いがした。

■程の良い距離から俯瞰できる

 日本では数少ない「球技専用スタジアム」であるユアスタでは、特に眼福は倍加する。陸上競技のトラックがないため、ピッチとスタンドを隔てる距離が短い。それだけプレーをより手元で味わえる。仙台の攻守の切り替えの速さ、縦への推進力がびしびしと体に伝わってくる。

 日本代表の関口訓充のドリブルの切れ味、自陣から敵陣までサイドをフルカバーする運動量に驚く。松下年宏の前線から下りてくる動きをおとりに、DFラインの背後を突く赤嶺、そこに出る縦パス、そういうグループとしての動きも、程の良い高さ、程の良い距離から、ここでは俯瞰(ふかん)できる。

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