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津波浸水予測「逃げるしかない」
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日本海中部地震の津波被害を語り継ぐため、五所川原市の十三湖河口に建立された石碑「津波之塔」(左)。写真奥は十三湖大橋と十三湖。この付近に4メートル以上の津波が押し寄せると予測され、石碑の高さ(台座を含め約3.3メートル)を上回る |
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高台から見た風間浦村易国間地区の中心部。津軽海峡(写真右側)に注ぐ易国間川(同手前)沿いに、訓練塔がある風間浦消防分署(中央)や村役場(その左隣)が並び、津波被害の恐れがある。海沿いを走るのは国道279号 |
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「早く、早く、高台へ」「逃げるしかない」。最大クラスの津波想定による県の浸水予測が示された29日、日本海沿岸の住民たちは、県内で17人が犠牲となった1983年5月の日本海中部地震の忌まわしい記憶を重ねながら、自らを守るすべを口にした。命を守り、被害を最小限にとどめるためには−。住民に危険区域や避難ルートを周知するためのハザードマップ(災害予測地図)の作成、避難所の新設、援護が必要な人への対応など、各自治体は予測を基に対策を進める方針だ。
「運命を分けたのはほんの数十秒の差」と鯵ケ沢町の工藤忠昭さん(70)は振り返る。日本海中部地震では、同町の赤石漁港で防波堤の工事中だった作業員3人が犠牲になった。一緒に仕事をしていて、自身も津波にのまれかかった工藤さんは「あの時は自分の身を守ることで精いっぱい。逃げるしかないんだ」と力を込めた。
当時、五所川原市脇元地区の自宅近くで津波を目撃した黒川進さん(73)は「今度津波が来たら、海岸線で見ていないでとにかく逃げないと。自分の家や避難所の標高も知っておきたい」と話す。
「日本海側に津波はあまり来ないという間違った考えは残念ながら今もある」と、鯵ケ沢町七ツ石町で防災を担当する副町会長の花田恭一さん(65)。「とにかく津波は怖いという意識を植え付けるしかない」と強調した。
浸水予測の発表を受け、各自治体は対策を進める予定だ。
五所川原市は津波ハザードマップを作成、配布する。十三湖岸にある同市十三地区は今回の予測では浸水域に含まれなかったが、津波が来た場合に避難する高台が近くにはない。市は同地区への新たな避難施設の建設を検討しており、小田桐宏之市総務部長は「県のデータはあくまで予測値。予測以上の事態を想定し、対策を取らなければ」と気を引き締めた。
町人口の7割、約7千人が浸水域に該当すると推測される深浦町も、ハザードマップ作成、海抜表示板の増設を進める予定だ。
中泊町では浸水域の居住者は最多で959世帯、2187人と推計されるが、津波発生時の避難所は現在2カ所だけ。秋元良一総務課長は「新たに避難所を指定するとともに、避難経路の策定も進めたい」と防災計画を見直す方針を示した。
高齢者ら自力では移動が困難な要援護者への対応は各自治体共通の課題。県高齢福祉保険課によると、日本海沿岸を含む県内34市町村が2011、12年度、要援護者の所在情報や浸水域、避難所を反映した「要援護者マップ」を作成している。
鯵ケ沢町総務課の工藤輝幸班長は「自主防災組織、民生委員、社会福祉協議会などとともに、マップを活用した要援護者避難の態勢づくりを検討したい」と話した。
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