安倍首相:揺れるTPP方針
毎日新聞 2013年01月31日 21時38分(最終更新 01月31日 22時42分)
安倍晋三首相が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加について、7月の参院選前に政府の基本方針を示すと29日に表明したことが波紋を広げている。首相はこれまで、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対」との自民党政権公約を踏まえつつ、発言のニュアンスを微妙に変えることで推進派にも配慮してきた。31日には「判断時期は決めていない」と火消しに走ったが、決断が近いのではとの臆測も出ている。
首相は29日、日本テレビの番組で「(参院)選挙の前に、基本的に示すべき方向性は示していきたい」と明言。「国益を確保できて、聖域なき関税撤廃でないなら参加していく」とも述べた。
実は、自民党の公約も当初案では「聖域なき関税撤廃を前提としないなら、交渉参加に賛成」となっており、党内の反対派に配慮して修正した経緯がある。首相の29日の発言はこの当初案に近い。
ただ、農業団体の支持を受ける自民党内には交渉参加への反対論が根強く、「決戦」と位置付ける参院選への影響も読み切れない。首相の「参院選前」発言を、反対派議員は「方向性が参加と決まったわけではない」と警戒。公明党幹部も「どういうつもりで言ったのか分からない。参院選前に参加に前向きな発言をしたら、自民党内が持たない」と首をひねった。
首相は2月下旬に予定されるオバマ米大統領との首脳会談ではTPPについて踏み込んだ発言は避け、判断の時期を慎重に探る構え。31日の衆院本会議でも、早期の参加表明を促すみんなの党の渡辺喜美代表を「交渉参加の是非の判断時期は現時点では決めていない。日米首脳会談の議題は今後調整していく」とかわした。
首相周辺は「首相はまだ決めきっていない」との見方を示す。首相がなお推進、反対両派の反応を探っている可能性もある。【朝日弘行】