原発新安全基準:事故対策を義務化 地震、津波、テロなど
毎日新聞 2013年01月31日 02時30分(最終更新 01月31日 02時43分)
東京電力福島第1原発事故を教訓にした原発の新しい安全基準の全容が30日、明らかになった。これまで電力会社の自主的取り組みだった過酷事故(シビアアクシデント)への対策を、法律で初めて義務付けることなどが柱。原子力規制委員会は31日の検討会で骨子案を示す。その後、国民の意見を求めたうえで、7月に法制化し再稼働の申請を受け付ける。
新基準では既設も対象となる。設計が古い原発の場合は大規模な施設改修を求められるため、再稼働の時期に影響することは確実だ。工期やコストが電力事業者の経営を圧迫すれば、費用対効果で廃炉に追い込まれる原発も出てきそうだ。
新基準は、改正原子炉等規制法に基づいて適用される。骨子案では、福島事故のような過酷事故について「発生頻度はきわめてまれだが、発生すれば原子炉の著しい損傷や放射性物質放出の可能性がある」と明記。地震や津波、火災、テロ、航空機落下などを念頭に、過酷事故の発生を前提にした安全対策の重要性をうたった。
具体的には、通常の中央制御室が電源喪失や放射性物質による汚染などで使用不能になった場合を考慮し、原子炉格納容器の冷却作業を遠隔操作する「特定安全施設」(第2制御室など)の設置を義務付ける。同時に、免震機能や放射線の遮蔽(しゃへい)能力が高い「緊急時対策所」を設け、事故時の前線基地としてあらかじめ備えることを求める。放射性物質をこしとるフィルター付きベント(排気)装置なども盛り込んだ。
火災対策では、原子炉内で使われている可燃性ケーブルの交換を求め、延焼を食い止める防火壁の設置などを義務化する。
また、地震や津波に関する項目も改定。活断層については、これまで「12万〜13万年前以降」に活動していたかを対象に調べていたが、その年代で確認できない場合は「40万年前以降」までさかのぼって調査することを求める。原子炉建屋などの重要施設の建設を活断層の直上に認めないことも盛り込まれ、法的な強制力で運転停止を命令できる。原発ごとに最大の津波の高さを想定する「基準津波」を取り入れ、それに応じた防潮堤などの安全対策を求める。
しかし、一部対策については、義務化の猶予期間を設ける方向で調整する。【中西拓司】