ヒロイン手帖 × 会田誠 3

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—うぶ毛が生え胸がツンとしてくる14歳の少女には奇跡の時間がある!


「うぶ毛、胸もこれから成長するぞと、前に前に尖っている状態、3日後にはまた毛も伸びたなというのが理想ですけどね。まっあの、そんなの見たことないんですけどね、実際には。あくまでも妄想の世界ですから。妻とスーパー銭湯みたいなところに行くと、風呂から上がって休憩所で報告させるんです。その世代と思われる子がいたら〝あれは生えていたか?〟とか。妻も最近は観念して報告してくれますけどね。だからまあ、妄想の世界だから楽しいわけでね。そういう意味では表現の規制は別にして、現実世界で“14歳に手を出すとお縄頂戴”というシステムは、むしろ自分にとってはいい掟ですね。永久に見られない、触れることが出来ないという掟がファンタジーとして成立するんでね。まあ、心優しき変態ということにしておいてください」


世界を相手に美少女ファンタジーを展開するアーティストの肝だろうか。


「14歳くらいに奇跡の時間があると、勝手に妄想してるんですね。その前後はリアリズムの時間で。そんなこと考えて、一番最近の『滝の絵』ができた。スクール水着にしたのはまあ、ファンタジーの流れで、自意識が芽生えてオシャレな私服や水着で着飾っているよりも、大人から与えられた服を黙って来ているという状況が好きなんですね。まあ、本当はすっぽんぽんでもいいんだけど、なるべく美術館で飾られることを思って水着にしたんですけど」


14歳のファンタジーとは、うぶ毛やツン胸の他に、何が存在しているのか。


「手足……ふくらはぎ、そういうのが大切ですね。だから尖り始めた胸もいいんだけど、子鹿ちゃんのような足も好きですね。全身の躍動感を眺めていたい。南アルプスの天然水のイメージ。木陰に隠れて、彼女らを……野生の子鹿ちゃんたちを見ていたい。だから僕の妄想世界は、本当は逆にユニセフから表彰されてもいい平和なロリータなんですよ」


 一呼吸つき、会田氏は「いやあ、恥ずかしい下半身事情をべらべらしゃべってしまったなあ。酒が抜けて来たらけっこう恥ずかしくなって来たな」と呟いた。そして我々に向けて「まあ現実的なセックスにおいては、22歳以上、イキやすい女性が理想ですかね」と言った。


「だから僕も、うぶモード的な人間なんですかね。これは10代女性と中年男性をつなぐ雑誌なんですよね(笑)。僕は思春期がダメだったからこうなったんですけど。中学時代、普通だったら女の子と自転車に2人乗りしたりしてるような時代、その気配さえなかったんで。人並みに好きな同級生とかいましたけど、僕がちょっと不気味なヤツだったんで見向きもされず。その頃に女の子と一緒に自転車で帰るとか、チューのひとつでもしていれば、僕の人生もまた違ったかもしれないですけどね。みうらじゅんさん的な言い方をすれば、童貞をこじらせたタイプだったわけなんでね」


今後は新たな世界観に挑む気もある。


「あえて白人女とかモチーフにするのもいいかな。必ずしも自分が一番好きなものを描かなくてもいいかと。アメリカ人なんかはやっぱり、ロリコンはダメだ何だと言う以前に、黒髪の黄色女が切り刻まれようが何されようが他人事みたいなんでね。あえてまあ……」


日本のどこかの山村にいるかもしれない幻想の子鹿ちゃん(14歳)を愛でる一方で、近未来の遺伝子組み合え作業で誕生した人工少女を切り刻んできた嫌われ者指向のアーティストが、本格的に白人社会に挑むということだろうか。恐ろしくもあり、楽しみでもある。




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会田 誠(あいだ・まこと)

現代美術家

社会通念に対するアンチテーゼを含む、さまざまなテーマを扱う作風は国際的な評価を固めつつあり、現代美術を代表する作家である。既婚。

リンク ミヅマアートギャラリー

このインタビューは2008年うぶモード9月号の転載です。



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