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<大津・中2自殺>第三者委「調査に限界」

毎日新聞 1月31日(木)21時27分配信

<大津・中2自殺>第三者委「調査に限界」

報告書の提出後、記者会見するいじめに関する第三者調査委員会の尾木直樹委員(右端)ら委員。左端は越直美・大津市長=大津市役所で2013年1月31日午後5時11分、長谷川直亮撮影

 大津市立中学2年の男子生徒が自殺した問題を調査してきた市の第三者調査委員会は、31日に提出した報告書で、いじめが自殺の直接的要因となったと断定し、学校、教育委員会の対応を厳しく批判した。だが、発足が生徒の自殺から約1年後だったうえ、権限が限られ、調査の限界も認めた。一方で、文部科学省などは、積極的な「いじめ対策」に乗り出す方針だ。【千葉紀和、石丸整】

【報告書の内容は】大津・中2自殺:いじめが直接的要因

 ◇資料読み込み掘り起こし

 大津市の第三者委は異例ずくめだった。いじめに関する情報を公開せず、批判を受けた反省から、越直美市長は調査項目や委員の人選について、遺族側と事前に協議。愛知県刈谷市の高校2年の男子生徒が自殺したケースでは、委員の名前も非公開だったが、大津市は遺族が推薦した教育評論家の尾木直樹氏ら3委員を加えた。

 更に、過去に例がないほど膨大な資料に当たった。滋賀県警が並行して強制捜査に乗り出し、押収した学校の内部資料のほか、全校アンケートも提供された。市教委から提供された資料には一部黒塗りがあったが、第三者委は全面開示を要求。調査期間を1カ月延長し、学校側が虚偽の情報を基に自殺原因を「家庭の要因」としていた事実も解明した。

 限られた時間の中で、聞き取りは臨床心理士資格を持つ委員が中心になった。「責任追及が目的ではない」と、丁寧に聞き出して事実を積み重ねた。

 一方、調査に強制力はなく、加害生徒からの聞き取りは難航。横山巌委員長が手紙を出して依頼し、昨年12月に一部が実現した。中心人物と目されていた生徒は母親と聞き取りに応じ、反省も口にした。「遺族に謝罪の機会を作ってほしい」とも申し出たという。だが、3回目の聞き取りはできず、遺族への謝罪も実現しなかった。別の加害生徒も応じず、担任教師は書面で回答するにとどまった。

 自殺から1年が経過していたため、第三者委は「希望する生徒全員から聞き取りできなかった。発足の遅さは調査の正確性に影響を与えた」と指摘した。また、同級生3人のうち1人はいじめと認定しなかったことについて、第三者委は「徹底調査で事実を確定した」と説明した。しかし、遺族側は「調査権限の限界ではないか」と指摘した。

 ◇行政、対応を積極化

 「いじめのトンネルを抜けようとした」。第三者委の報告書は、男子生徒の自殺をそう結論付け、いじめと自殺の直接的な関係を認定した。

 子供の自殺をきっかけとした調査委員会は、10年以降、少なくとも川崎市▽札幌市▽鹿児島県出水市▽浜松市−−の4市で設置されたが、原因が特定できなかったり、いじめが自殺につながった「可能性」の指摘にとどまったりしていた。文科省の中には「いじめが自殺の原因と認めれば学校や自治体が被害者や遺族から損害賠償を求められる可能性があるため断定しにくいのではないか」との声もあった。損害賠償を避けたい意向が働いたのではないか、との見方だ。

 しかし、今回の最終報告で、中学校を担当する同省初等中等教育局の幹部は「今後、調査委員会の在り方も変わるだろう」と話し、調査委員会の設置が増え、しっかりとした調査といじめと自殺などの因果関係の解明が進むと見る。同省も「いじめ問題に積極的に取り組む」と前向きだ。

 大津市の問題が明るみに出て以降、国のいじめ対策は大きく進んだ。同省は昨年8〜9月に緊急調査を実施し、昨年4月からの半年間で14万4054件のいじめを認知。11年度1年間の7万231件の2倍で、子供の生命や安全がおびやかされる「重大ないじめ」も278件あった。同省と警察庁は、いじめが暴行や恐喝などの犯罪行為を伴う場合、学校や教育委員会と警察が連携する必要があるとして、1月に連携を求める通知をそれぞれ出した。

 政府も「いじめ防止対策基本法(仮称)」の成立を目指す。自民党が作成した骨子案は、学校に対し▽いじめを受けた子供が自殺したり、重傷を負ったり金品を奪われたりする▽いじめで学校を長期間欠席する−−場合に調査委員会の設置を求めている。

最終更新:2月1日(金)1時6分

毎日新聞

 

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