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06-29, 2004 俺の体の筋肉はどこをとっても機械だぜ
■電気ビリビリ

「優雅な生活が最高の復讐である」さん(http://d.hatena.ne.jp/walkinglint/20040628#p2)で、「マイクロソフト、「人体ネットワーク」技術の特許を取得」というのを知り、おお?と思ったらいわゆる(メタルギアファンご存じ)PANの話でした。PAN自体は特に目新しいものではない、と記事中にもありますな。
とはいえ、
さらにMicrosoftは、人体の物理抵抗を利用して、皮膚の一部にバーチャルキーボードを作ることも可能だと述べている。そして、基盤となる全ての技術をカバーするべく、提出書類の最後にはペットについての言及もある。
「この技術を人体に限定する必要はなく、さまざまな動物の体を利用することも可能だ」と同書類には記されている。
皮膚キーボード、というコンセプトにちょっと燃えた。
■イノセンス最終日

金曜日(25日)、品川IMAXでのイノセンス最終上映に仕事のあとダッシュして2010時の回に行ったんですが、400強キャパの劇場で7割〜8割くらい埋まっておりました。そこでふと興味がわいて、イノセンスではてな内を探ると、
- mottiダイアリ(id:nmotti:20040625)さん
- 堕落人生(id:vh5150:20040625)さん
- umino-飽食の日々(id:umino:20040625)さん
と同上映に三人ほどはてなユーザがいた御様子。
いや、だからなに、ってわけでもないんですが。
06-26, 2004 レーガン、パトレイバー、攻殻、80年代
■本日の収穫

で銃について押井インタビューが6ページと意外なボリューム。押井特集で藤木さんもプロテクトギアのモデルで登場(イノセンスのプロモでバトーの中に入っていたとゆーのは本当でせうか)。
まあ、「外部にある身体としての銃」という最近の押井言説のラインで展開するので、目新しい展開はとくにないですが。
しかし、2nd GIGで「全員下痢になる話」やるとかぬかしてて笑えます。「特車二課壊滅す!」じゃねーか。あと、最後のほうは内戦で空爆もやるとか。
ゴーダ。
ナイス。もうゴーダ萌えですよ。かわいい。タチコマかわいいとかぬかしてると時代においてかれますよ。西田健ボイスが炸裂。キャラ立ちまくってるなあ。ひさしぶりに気持ちのいいヒールを見ているですよ。
神山色、というか前SACの目新しさというのは、「ようやく、80年代を題材にする作家がアニメに登場してきた」ということなのだろう。「オトナ帝国」の先に出現する風景、というかなんというか。ロッキードやグリコ・森永を題材にする世代。自分の原風景を表出したとき、オリンピックでも学生運動でもベトナムでも万博でもない80年代の記憶がロードされる世代の出現。
SAC。この作品のインフラの意図的なばらつき、不統一感というのは各所で指摘されている。電脳通信があるのに建築は未来ではなく、思考戦車が田んぼのある郊外を走る風景。この作品のテクノロジーは意図的にいびつな設定にされている。というか、電脳技術やサイボーグ技術以外は現在と同じ風景や生活がそこには設定されているのだ。
思うに、SACというのは電脳版「パトレイバー」なんだろう。「いま、この世界にアニメで見るような巨大ロボットがいたら?」というエクストラポレーションが「パトレイバー」だった。それは未来として描かれていたものの、内実はあからさまに「いま、ここ(あるいはそれより2〜3年前)」の風景であり、その風景の中に「巨大ロボットが日常化した」という異物を挿入した世界、それが「パトレイバー」だった。
SACはそれなりにSFである士郎正宗原作とも、あるいは「未来の日本」という設定を破棄して「どこか中華系の異世界」を設定した押井映画とも異なる。SACは確かに2030年を設定として掲げているが、そのスタイルはあからさまに
「いま、この風景にサイバーパンクのような電脳技術があったら?」
という「パトレイバー」的スタンスを採用している。「パトレイバー」のロボットというテクノロジーが電脳技術に置き換えられた、そういうスタンスだ。
グリコ・森永事件(SACは『レディ・ジョーカー』を参照している)。ロッキード。そしてサイバーパンク。これらが80年代という言葉でつながるとき、そこにぼくはいままでのフィクションとは異なる息苦しさが立ちあらわれてきたのを感じる。それは、ぼくらが子供時代を生きてきた風景を、突き付けられる時代がやってきたのだ、ということなのだろう。今年、レーガンが死んだ。「強いアメリカ」を提唱したレーガン。弱者を切り捨ててきたレーガン。イラン・コントラ事件のレーガン。サプライサイド屋の妄言にはまったレーガン。ソ連を「悪の帝国」呼ばわりしたレーガン。
レーガンが死んで、神山健治という作家が自分の原風景としての80年代を描きはじめた。2ndは80年代を直接には描かない(とか思ったら、新宿の公園で日雇いを集めて原発の掃除させた話をネタに使ってましたな)。しかし、その物語は否応なく80年代的な感性が表出するものになるだろうな、とぼくは思う。
てか、プルトニウム輸送話がえれえニューヨーク1997臭いんで笑ってしまった。これも80年代的風景の表出なのだろうか(んなわけない)。音楽も心無しか安いシンセ臭い上にベンベンしてないか?
・ヤンジャン
Berryz工房の脇に、サイズを示すためのタバコもしくは身長170センチの人間を置くべきだ。
・反社会学講座
「少年犯罪は増えていない」はもはや定番ですが、やっぱ「ふれあい大国ニッポン」が爆笑できる。ここで読めるけど、やっぱ電車で読みたいし。
野田真外さん、切通理作さんといった定番(中身も予想の範囲内)は巻末にごそっとかためて放置しつつ、ドクター・バロウズな細馬宏通さんや篠原一さん、石倉由さん、そして佐藤大輔さんに瀬名秀明さん、と人選が面白い本。駄目駄目な現代思想かぶれも1/3ぐらいあるけど、それなりに読みではある感じ。
satoe
2004/06/28 00:55
いつも拝見してます、というのも今更ですが…。で、藤木さんですが確かにバトーのマスクアクターをされていました。バセット展ではレース参加までやらされたそうですよ。結果は散々だった様です。
Projectitoh
2004/07/02 23:29
どもども。ということは私は日比谷映画での初日に藤木さんのすぐ近くにいたわけですね〜。余談ですが、昔ゲームショウで、「あのコナミブースの着ぐるみのなかには早坂妙子さん爺ゲーマーには有名なコナミの美人広報さん。スナッチャーのパイロットディスクにも登場)が入ってたらしいぜ」という噂話があったのを思い出しました。
06-22, 2004 ぼくたちの好きな管理社会
■THX-1138

m@stervisionさんの掲示板で知ったんですが、
やっと「THX-1138」DVD出るよ〜(涙)
というか、むこうでは特別版として劇場公開するっぽい。
公式:http://www.thx1138movie.com/
おお、壁紙!まさかTHX-1138の壁紙を設定できる日がこようとは。速攻で会社のiMacをまっ白い背景にぽつんとしゃがみこむロバート・デュバルに変更。
予告編:http://www.thx1138movie.com/trailer.html
いやいやいや、いいね。人間性とかもう凄い勢いで否定しまくってくださいよ・・・てか、なんか見たことないシーンがちらほら。あれ、マリンカウンティのシビック・センター(ガタカ社ですっかり有名になってしまった、ライト親父のあの建物)でロケなんてやってたっけ、この映画? CGでシーンも追加してるっぽくないですか。
ああ、この白さ。この空虚。たまらん。そうなんだよ、レムも言ってるだろ、人間は自由から解放されたがってるんだよ! 自由とか選択とかウザくね? やっぱケミカルに精神を制御してクールにコントロールされたスマートな生き方、これっしょ! あんた「リローデッド」見たろ? 宮台の「権力の予期理論」読んだろ? そうなんだよ、自由な選択なんて所詮は画餅なんだよ! というわけで見せ掛けの選択の自由なんだからそんなもん捨てちまえ! そんなもんは奴隷の幸福だ? おいおい、神学論議はやめてくれよ。俺は幸福について話しているんだぜ!
とまあ、管理社会ファンのたちの悪い冗談は置いといて、
今年はマイケル・ウィンターボトムの「CODE 46」もあるし、ディストピアスキーには嬉しい年になりそうだ。
■愛戦士ニコル

「ガタカ」で思い出したけど、以前の日記(http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/20040427)で書いたスピの新作「the terminal」って、アンドリュー・ニコルの原案・製作総指揮なのね。そういわれると、いかにも、って感じのお話(東欧の架空の国からやってきたものの、戦争でその国がなくなってしまい、パスポートもビザも無効になり、帰ることも、アメリカ国内に入ることもできず、空港で生活する羽目になる、というお話)。
ちなみに、監督としてのニコルの新作は、ニコラス・ケイジが武器商人を、イーサン・ホークがインターポール捜査官を演じるアクション・サスペンス「Lord of War」(2005)だそうな。
06-20, 2004
■レニー・ハーリン祭りの進行

「ドリームマスター」「ダイ・ハード2」「ドリヴン」と消化したが、はやくも実存モードにとらわれはじめ、祭りを完遂する自信がぐらつきはじめているので、今日はひさしぶりに劇場へ足を運んで、映画に対する信頼を回復することにする。
しかし、ダイ・ハード2でウィリアム・サドラー演じるスチュアート大佐というのは、いまにして思うとはっきりオリバー・ノース中佐だったのだなあ。当時は麻薬問題花盛りで、そっちばっかり目がいっていたけれど、これは同時にイラン・コントラの爪痕でもあったのだ。大ブッシュ(今のブッシュは小ブッシュ)時代につくられたこんな大味大作にも、レーガン政権の影は伸びているのであった。
どうでもいいことに気が付いたんですが、この映画の麻薬王エスペランザ将軍が権力を握っていた架空の国「バルベルデ」って「コマンドー」の独裁国家の名前ですな。ジョエル・シルバーつながりの設定。なんだか設定好きなアニオタのお遊びみたいで笑ってしまった。
06-19, 2004 わが青春の大味映画
■レニー・ハーリン祭り

をしようと決意する。できるだけ不毛なことをしたい、といろいろ考えたが、ジョン・ブアマン祭り、というのはすでに友人がやってしまったうえに「エクソシスト2はやっぱりすごい」とブアマンはモストインタレストディレクター認定するに及んで、わりと建設的なベクトルにシフトしたのがうらやましかったので、俺もできるだけ不毛な香りのするディレクターを選んで祭りが終わる頃には「再発見」しちゃったりしてそれなりにケチなスノッブ魂がホクホク、みたいな。意味不明。
というわけでこれから「ドリームマスター」と「ダイ・ハード2」を見る。ダイ・ハードは90年。俺がバブリーな大作にがっつり熱中していた時期だ。ジョエル・シルバーにカロルコ。そういうこと。
俺はガノタにはなれなかった。富野なんて心底くだらないと思っていた。マクロスも見なかった(オーガスはエロかったので観ていた)し、ロボットものにはほとんどハマらなかった。
では、中学高校の俺様の精神に深い傷跡を抉ったメディア・アイコンはなにか。とつらつら考えるとそれは「80年代後半〜90年代初頭までの大味超大作映画群」ということになるのだろう。これはあまりに共通言語としてはニッチが小さすぎる気もする。世間はガンダム花盛りで、ガンダムで世代論を語ることは、それなりに意味があって高尚で言論的な市場が確保されている気もする。しかし、この時期の大作映画に対する同情心というものはほとんど見られない。言説もまた、ほとんど見当たらない。
しかし、そうだろうか。シュワルツェネッガーと共に育った子供達は、そんなことは忘れてしまったのだろうか。「レッドブル」とか観て、冒頭のカロルコロゴに興奮し、オープニングのレーニン三段寄りに目眩をおぼえた子供達はどこに行ったのだろうか。「ゴリラ」ではじめて「サティスファクション」を意識した厨房たちは、いまどうしているのだろうか。
ということを確認するために俺はこれから「ダイ・ハード2」を見る。なんだかよくわからなくなってきたが。
気が向けば夜、なにか書くかも。
06-12, 2004 「日本以外全部沈没」
■本日のスターリング

「サイバーパンクの草分け、ネットの「大混乱」を嘆く」
「「政府のネット取り締まり」を訴えるSF作家」
表題だけみるとブリンばりの右翼に成り下がったかと思われかねないけれど、内容はまあ、しごくフツーのこと言ってます。
■「蹴りたい田中」

や「華氏911(これに関しては、正直ブラッドベリに失望したよ。肝の小さい爺さんだ)」はオッケーなのに、「世界の中心で愛を叫ぶ」や「CLANNAD(クラナド)」に感じる気持ち悪さ、下品な感じはなんでしょー、とつらつら考えてみたが、単純なことで、「蹴りたい田中」や「ファーレンハイト911」は「みんな知っていることを前提とした」パロディーなのに対し、後者二つはどう考えても「かっこいいし、みんな知らんだろうからイタダいてよかんべえ」という卑しすぎる根性が気に入らんのだ、ということだな。そもそもエヴァで「世界の中心で〜」と出てきたときもちょっぴりイヤだったのだ。「かっこいいし、みんな知らんだろうから使っちまえ」的卑しさが微妙に漂っていたから。でもまあ、庵野さんSF者だし、そうとばかりも言い切れんだろう、ということでスルーしていたのだけど。
「悔い改めよ、ハーレクイン!とチクタクマンは言った」とか、「万延元年のラグビ−」とか、そういうのはいいんだけど・・・「世界の中心〜」「クラナド」みたいに、題名の時点で卑しい根性が張り付いているのって、見ていて正直不快だなあ。志の低さがスケスケで。
つまり、法的なことや倫理的なもの(はすこし関係あるか)で間違っているからだめだ、というのではなく、作り手の志の低さと醜さが「美しくない」から嫌なのだな。単純に美的な問題だ。
つまり、「エブリ・リトル・シング」というゲームが仮にあったとして、それ寒くないか? 「Di As Infinity」って題名の小説、読む気するか? 「ドアーズ」とか「ビートルズ」とかそういうタイトルのゲーム見て、作り手の「恥」の感覚を疑いはしないか? ということなのだ。醜いでしょう、そういう「恥」の欠如。
クラナドといえば、「Theme From Harry's Game」は本当に名曲だと思う(これを「パトリオット・ゲーム」のサントラで聴いたのが、クラナドを聴くきっかけだったのだ)。
追記:と思っていろいろサーフィンしていたら・・・「アカルイミライ」ってエロゲーがあんのかよ(爆笑)! おしぼり工場の上司一家を撲殺するゲームか? 東京都の河川で毒クラゲを繁殖させるシミュレーションか? 廃品を回収して修理するゲームか(なんだか「グルーヴ地獄」みてえだな)? 黒沢清は「セックスシーンは撮れない(人物が密着して距離がない構図は苦手だ、という意味)」って言ってたぞ! googleで検索したら映画オフィシャルの次にきやがった! ここで見ると「シチュエーション:輪○(3),レ○(1),寝取られ(1),ア○ル(1)」とか書いてあるぞ! どうする黒沢清(意味不明)! ラース・フォン・トリアーなら撮れそうだ!
なんだか怒る気力も無くなってきたが・・・「To Heart」ってテレビドラマが放映されたとき、エロゲーやる人たちは何にも感じなかったのだろうか。感じなかったというならいいけれど・・・もしあのとき不快や気持ち悪さや怒りを感じていたのなら、こういうことがどれだけ醜いかわかると思うのだけど。
ヤポネシアン
『ときめきヒルズ高校白書』がINで、『おまえが世界をこわしたいなら』がOUTって感じでしょうか。あとブラッドべり先生は大変な親日家で、日本のSF関係者に「いつかハワイに次いで51番目の州にして貰えるといいね」って励ましの声かけて下さりやがったそうです。
倶零舎
初めまして、でこんなことを書くのは恐縮なのですが、MGSの「恐るべき子供たち」に同じ臭いを感じてしまった私は底意地が悪いのでしょうか。タイトルにではありませんけど。
Projectitoh
ああ〜、たぶん作り手が「クラナド好きです」とか「エンヤ好きです」とか「エヴァ好き」とか「実はSF者」と一言どこかで言っていたら(もう言っているかもしらんが)オッケーな気もしてきました。愛情が見えれば許す、ってそういう感じなのかもしれません。
06-11, 2004 車泥棒
■GTAヴァイス・シティ(ゲーム)

本サイト掲示板へのありがたいタレコミで、ちょっと興味が湧いてimdbで検索かけてみましたが、
http://www.imdb.com/title/tt0314123/fullcredits
なんじゃこりゃ
声優陣すごすぎ。レイ・リオッタにトム・サイズモア、ウィリアム・フィシュナーにロバート・ダビ、ルイス・ガズマンにダニー・トレホ、ケビン・マクキッドにファイルーザ・バルク、そしてそしてバート・レイノルズにデニス・ホッパー??リー・メジャース??ゲーリー・ビジー??デボラ・ハリー??
「ダイ・アナザー・デイ」のライターが脚本を書いたうえ、ブロスナンとリチャード・キール(ジョーズね)が声を当て、悪役がウィレム・デフォーという007ゲームの「エヴリシング・オア・ナッシング」もかなりびっくらこいたけど、GTAの声優陣の豪華(というよりあまりにわかりやすい趣味的キャスティング)さもすげえなあ。
傍役ファンのツボをついているというか、うますぎる、人選が。ここまで露骨にやられるとちょっと鼻につく感じがしなくもないが、しかしそれでも、ごめんなさい、欲しくなってきました。
06-10, 2004 And all that could have been.
アキバに行って、ラジオ会館の輸入DVD屋Saleに行き、押井がコメンタリーを新録したというUS盤の「ビューティフル・ドリーマー」を予約する。それから、いろいろと物色したあと、となりの御茶ノ水に行き、洋麺屋でたらこカルボナーラを食べる。
そして聖橋を渡れば、そこには医科歯科大の神田川に壁面を成す建築が在り、そこにはCTが待っている。ウィィン、と駆動音がシャープに唸り、人間を計測し数値化し仮想身体を汲み上げんとする欲望が産んだデウス・エクス・マキナがぼくのからだを輪切りにする。最近見た、医療被曝による癌罹患率の上昇を報じるニュースが、ちらりとあたまをよぎる。
あっさりしたものだ。フィルムが焼き上がるまでの20分、ぼくは待ち合い室で寝ている。ヘッドフォンからはNINの「And All That Could Have Been」が流れてくる。and all that could have been.そしてそうなるはずだったすべてのもの。やってこなかった未来。そうはならなかった人生。
そしてフィルムを受け取り、整形外来に行く。主治医の先生はそれを見て、何かを告げる。半年に一度、ぼくはこの一言、このオラクルを受け取りにここへ足を運ぶ。昨日一昨日は眠れなかった。ひどいもんだ。臆病な自分に腹が立つが、どうしようもないことだ。
「大丈夫ですね。とりたてて腫瘍の影はみられません」
五年生存率、ということば。それ自体に意味はない。あくまで確率の話だ。六年後、十年後に転位が見つからないとは言い切れない。とはいえ、もう三年目。半分は越したわけだ。
いろいろなことを思う。医者に自分の大腿の中に巣食うものの存在を告げられたときのこと。あのとき感じた絶望。そんな絶望も恐怖も悲しみもあっさり吹き飛ばしてしまった安定剤のこと。その化学作用によって感情が吹き飛んだときの奇妙な怒り。病院内から手持ちのノートをネットに繋いだこと。友人がエロゲーを持ってきてノートにインストールしてくれたこと。リハビリ。退院して、家に帰ってきたとき玄関から飛び出してきた、愛犬のぬくもり。お見舞いにきてくれた「尊敬する」人たち。病院で書いた原稿のこと。退院したあと、誰にもわからない理由で彼岸に渡ることを選んだサークルの後輩のこと。彼女の入った棺の小ささが意外だったこと。彼女から預かった同人誌の原稿が、データクラッシュで読めなかったこと。
そして、いま、愛犬は彼岸にいる。あのとき、生きて帰ってきたぼくを抱き締めた温もりは、ペットたちの共同墓地にいて、そこへぼくは墓参りに行き、あふれる思いを、残された者たちが抱えるには多すぎて溢れてしまう情念を、墓にすくいとってもらい、身軽になって家に帰る。
そして今日も、家に帰ってきた。今週は「下妻物語」を見ようかな、と思いながら、レンタルで「サブマリン707」と「プラネテス」と「私家版」を借り、その下に在る本屋で「スチームボーイ」の映像DVDがついた「ニュータイプ」を買って家に帰る。
And All Could Have Been.足が普通に動いたら、どんな人生だったのだろうか。あの女の子が彼岸に渡らなければ、愛犬が癌で逝かなければ。それを想像することは不可能だし、実際、あんまりいまと変わらない気もする。クローネンバーグだ、養老だ、身体だ、サイボーグだ、とか言っていたら、ほんとうにそういう人生を生きる羽目になってしまったことを、幸運とは思わないまでも、何かの符合であるぐらいには考えてもいいのかもしれない。
さて、「プラネテス」見るか。
06-06, 2004 箱根
■箱根は今日も雨だった

というわけで職場の人たちと箱根に一泊旅行いうスーパーノーマルライフだったので、書くこと特になし。ヲタ的なトピックスとしては、大涌谷で黒い卵を食べながらロープウェイの谷間を見たとき、
「おお、これがゴジラとバラゴンが闘った風景か」
と感動したくらいですか。しかし実際の風景を見ると、あのゴジラvsバラゴンの場面は、このすさまじい空間的な広がりをまったく表現できていないことがわかる。雨ザーザーで、硫気がけぶってものすごい霧になり、パースペクティヴの雄大さを150パー増しにしていたというのはあるけれども。あの谷のすさまじい容積をあの場面はあまり表現できていない。
06-02, 2004 これでオトナになったネ
■なんかうれしいぞ

「電子消費者契約通信未納利用料請求最終督促状」
エロチラシ、勧誘、そういったものにここまで無縁な生活が続くと、やっぱり貧乏すぎるところは詐欺も狙わんのか、と妙な疎外感を感じていたところに、来たよ、なんか嬉しいぞ。なんかこれで俺も社会の一員になれた気がするよママン。
さて、ざっと目を通すと「最終」とか「特例」とか「大至急」とかやたら文面に踊っているのが面白い。とくに「最終」の連発具合。最終督促状彼女。セカイ系と詐欺の美しい融合。いや、別に意味はないです(悪意はあるが)。あと「執行」ね。俺この言葉大好きだあ。「執行機関」とか「執行権」とか。このはがきにも「執行官」とか書いてあっていい感じ。すげえ権力をカサにきた感じ醸し出しでナイス。
しかも受け取った日が「最終」受付期限だというケツへの帆のかけ具合がリアリティなさすぎでナイス。はがきの下に印刷された「インクジェット紙はがき(再生紙)」という文字も面白さを倍増させていてオッケーだ。
しかしそれにしても「電子消費者契約通信未納利用料請求最終督促状」はいかにも長い。てか漢字大杉。これほど漢字が並んでいるのは毛利さんの役職名(注:宇宙開発事業団宇宙環境利用システム本部宇宙環境利用推進部有人宇宙活動推進室室長)ぐらいだぞ。あ、いや「首都圏治安警察機構特殊機動大隊」とか「警視庁警備部特殊車輌二課」ってのも充分長いか。このへんの「漢字大杉=恐そう」というこけおどし感も香ばしくてよい。