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2013.1.31 THU
なぜわたしたちは快感を好むのか?
TEXT BY SANDRO IANNACCONE
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
WIRED NEWS (ITALIAN)
──しかし、快感の追求は、わたしたちの社会的関係も左右します。なぜですか?
わたしたち個人の社会的認知は、快感回路の活性化のなかで、格別に強く作用します。最も強い動因のひとつが、金銭です。しかしこの場合も、物事は期待されているほど単純ではありません。友人とルーレットで遊ぶと仮定してみましょう。もしわたしたちが10ユーロ勝って、わたしたちの仲間が一文無しなら、わたしたちは非常に満足です。わたしたち両方が10ユーロ勝つと、先の例より少し幸福ではなくなります。もしわたしたちが10ユーロ勝って友人が100ユーロ勝つと、わたしたちが感じる感覚は、おそらくほとんど「不快」でしょう。
これは、快感がわたしたちの非常に高いレヴェルにある社会的つながりを無視できないためです。「他人のものをみだりに欲してはならない」という十戒の第十の戒めを無視して、わたしたちはいつも他人の物を欲しがり、隣人よりも多くを所有しているのを知ることに快感を感じ続けるでしょう。
しかし、これについてもうひとつ考慮すべきことがあります。進化に伴って、わたしたちの脳、特に認知的・社会的プロセスを受けもつ前頭葉は次第に大きくなりました。この領域とMFPCの間には次第により多くのつながりが形成されてきました。
これは、わたしたちが何の進化上の価値をもたない行動や状況からも快感を感じることができることを意味しています。食物や交配にのみ快感を求めるネズミと違って、人類だけが、文化的もしくは宗教的な信念から示唆を得れば、断食や禁欲から満足感を感じることができます。人間の文化がこれほど豊かで多様なのはこのためです。
──いつ、そしてなぜ、快感の追求が強迫観念となるのでしょうか?
この点に関して、科学はまだそれほど多くのことを知りません。わたしたちが知っているのは、ある人間が依存症になったり強迫観念を抱くようになる原因の40%は、遺伝的なものであるということです。わたしたちはD2という、ドーパミンの受容体を見つけました。D2に変異のある個体は、ほかの個体と比べて高い確率で依存症になります。
なぜD2は進化とともに消滅しなかったのかという反論があるかもしれません。理由は簡単です。わたしたちに強迫観念を起こさせる遺伝変異は、わたしたちにより好奇心をもたせ、たやすくリスクを受け入れさせるようにもするので、成功や社会的評価の点では勝者となる可能性があります。
現代の実業界の英雄について考えてみましょう。例えばスティーブ・ジョブズは興味深い人物で、リスクを恐れませんが、疑いなく偏執的でした。そして、彼はわたしたち誰もが知っているビジネス帝国をつくり上げました。
とはいえ、わたしたちは残りの60%の原因の多くを知りません。間違いなく大きな役割を果たしているのがストレスです。生物学的レヴェルでは、ストレスホルモンが血液中、そして脳の中に入ると、生物化学的・電気的変化を引き起こして、わたしたちは快感の感覚を控えるようになるのです。
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