サムスン電子、事故収拾の警察・消防を1時間妨害

セキュリティーを口実に立ち入りを拒否

 サムスン電子半導体製造工場(京畿道華城市)で発生したフッ酸事故直後、同社が現場検証に訪れた警察官や消防官の立ち入りを妨害していたとの指摘が相次いでいる。また同社は当初「死亡者が出た原因は作業員が防護服を着用していなかったため」と説明していたが、これに対しても「長時間作業をさせていたことが死亡の原因」とする指摘も相次いでいる。

 その一方で周辺住民の不安は収まらない。工場周辺のある小学校は、30日に予定されていた始業式を1日遅らせ、それ以外の学校も当初予定されていた屋外での授業などを取りやめることにした。華城烏山教育支援庁は事故現場近くの小学校2校を対象に、30日に疫学調査を行うことにした。

 事故が外部に伝わった28日、サムスン電子は現場検証にやって来た警察官や消防官の立ち入りを、セキュリティーを理由に拒否した。これは警察と消防署が明らかにした。華城東部警察署によると、この日午後2時15分ごろ、警察は「作業員が死亡した」との連絡を受け直ちに現場に出動したが、セキュリティーチェックのためとして1時間待機させられ、その後会社関係者の案内を受けてやっと中に入り、何とか事故現場を確認できた。

 その後もサムスン電子は現場に到着した消防車の立ち入りも妨害した。この日午後4時30分ごろ、「ガス漏れにより死者が出たとの届けがあったので確認せよ」との指示を受けた華城消防署は、直ちにポンプ車1台を現場に急行させた。通常なら5分で到着する距離だが、サムスン電子の警備員が「事故は発生していない」と言い張って立ち入りを拒否すると、「事故は間違いなく発生した」とする消防署からの再度の指示があるまで、40分も時間を無駄にした。消防署の関係者は「消防車は米軍部隊でさえも何の制止も受けず中に入れるが、ここでは警備員に制止され改めて無線で確認するなど、右往左往して時間を無駄にした」と不満げだ。

 サムスン電子は当初「監視カメラで確認した」とした上で「死亡した作業員で現場リーダーの男性(35)は耐酸防護服を着ていなかった」と主張した。これに対して作業を行ったSTIの作業員らは「リーダーを含む作業員は、最初は微量のフッ酸漏れを確認するため中に入ったが、その時点では膝下が覆われていない耐酸ガウンを着用していた」と証言。さらに「フッ酸はわずかでも皮膚に触れれば、耐えられないほどの痛みを感じるため、防護服を着用しなければ作業はできない」とも話した。これについてはサムスン電子も「改めて確認したところ、男性は最初は防護服を着ていなかったが、作業後半は着用していた」と説明を変えた。そのため「着用した防護服の種類よりも、フッ酸が漏れ出した密閉空間で長時間作業に当たらせたことの方が、死亡のより大きな原因」との指摘も出始めている。

 また「作業員が体に異常を訴えた後も、サムスン電子の対応は右往左往していた」とする証言も出ている。別の作業員によると、サムスン電子は自社所有の救急車で男性を翰林大学東灘病院に搬送した。残りの4人は水原亜州大学病院で「異常なし」との診断を受けたため退院させようとした。ところが午後2時ごろ作業員が死亡したとの連絡が入ると、4人も東灘病院を経てソウル漢江聖心病院に搬送。4人はこの病院でやけどと診断され、現在も入院中だ。

権祥銀(クォン・サンウン)記者
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