【青田貴光】職場で通名(日本名)の使用を強制されたとして、在日韓国人の男性が日雇い先の建設業者や元請けの大手ゼネコン、国などに100万円の慰謝料を求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。久留島群一(くるしまぐんいち)裁判長は「強制の事実は認められない」と請求を棄却した。男性は控訴する方針。
原告は兵庫県尼崎市の金稔万(キムインマン)さん(52)。2009年9月、大阪・梅田のビル建て替え工事で、大阪市内の建設業者から、通名の金海稔万(かねうみとしかず)を現場で使うよう強制された、と訴えていた。
久留島裁判長は、日雇い先の業者は金さんを以前雇った際、本名の使用を認めていた▽業者も在日韓国人で、本名で働く金さんを評価して仕事を優先的に紹介していた――などの点から、業者に強制の動機はないと判断した。その上で業者は、特別永住資格を持つ金さんには本来不要な、外国人就業届の提出を、ゼネコン側から求められると誤解していたと指摘。「書類の準備に3、4日かかるが、通名ならすぐ働ける」との打診に、すぐ働きたかった金さんが了解し、強制はなかったと結論づけた。
また、国が植民地支配時の「創氏改名」の被害回復の義務を怠ったとする主張も、「国の不作為と原告の精神的苦痛に因果関係は認められない」として退けた。