東京都国分寺市日吉町1丁目で30日、高さ約10メートルの鉄製の足場が倒れ込んだのは、JR中央線、青梅発東京行き上り特別快速列車の屋根の上だった。東京の大動脈が5時間も止まった。
沿線を歩いていた国分寺市の主婦(45)はその瞬間を目にした。「工事用の足場が倒れ、電線に接触すると、バチバチと花火のように火が上がった。火は土手の枯れ草に燃え移り、電車内に取り残された乗客が火の手が上がった付近を心配そうに見ていた」
乗客約800人は立ち往生した列車内で約1時間を過ごした。その後、JRの係員に誘導されて線路や側道を歩き、約500メートル離れた西国分寺駅に向かった。JR東日本によると、乗客のうち2人が「具合が悪い」と申し出て現場で一時休んだという。
気象庁によると、国分寺市周辺はこの日、「やや強い風」が吹き、近くの府中観測所では午後0時13分に最大瞬間風速10・9メートルを記録。小金井署は足場の組み立てに問題がなかったかなどを調べている。
JR東日本八王子支社によると、建設業者側とあらかじめ工事方法に関する覚書を作成。業者は作業中に見張る取り決めだったが、この日は作業がなく、見張りは不在だったという。
運休による混乱は、5時間に及んだ。上下線183本が運休し、約14万5千人に影響が出た。
午後5時ごろ、JR西国分寺駅は人であふれた。タクシー乗り場にいた会社員の仲田政人さん(24)は仕事でJR国分寺駅方面に向かう途中。「このままでは遅刻してしまう」
駅から徒歩約10分のバス停にいた主婦の斎藤たかよさん(55)は「もう1時間待った。自宅はすぐ隣の駅だから、電車なら3分で着くのに」。帰宅途中だった男性会社員(61)は立川駅から西国分寺駅まで約1時間20分かけて歩いた。「15年ほど通勤で利用しているけど、これだけ止まったのは記憶にない」と話した。
JR中央線快速は一時全線で運転を見合わせた。午後3時ごろから東京―国分寺、立川―高尾の上下線で折り返し運転。国分寺―立川は、クレーン車で崩れた足場を取り除き、架線などを点検した後の午後6時ごろに再開した。