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資金調達ができない、REIT破綻の深刻

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2008年10月10日(金)

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 不動産淘汰の嵐はついにREIT(不動産投資信託)まで波及した。

 10月9日、ニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生法の適用を申請した。負債総額は1123億円余り。REITとしては初めての経営破綻である。夏以降、新興デベロッパーの破綻が相次いだ不動産業界。物件の買い手であるファンドが破綻したことで、不動産淘汰は新たなフェーズに入った。

 ニューシティが破綻した直接の原因は、今月末に決済予定だった不動産の購入資金を調達できなかったことにある。購入を予定していた物件とは「ニューシティレジデンス池袋プレイシャスタワー」(仮称)。JR池袋駅西口から徒歩2分のところに建つ、地上32階建て、総戸数404戸の超高層賃貸マンションである。

 この物件、池袋の駅前という抜群の立地だが、取得費用が約276億円。「べらぼうに高い」(あるREIT運営会社の幹部)と業界内で話題になっていた。ニューシティは基幹物件にしようと考えたのだろうが、売買契約を結んだ昨年12月はサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題の影響が国内でも出始めていた時期。明らかにタイミングが悪かった。

内部留保がない

 それでも、物件を買えればまだよかった。だが、米国発の金融危機による市場環境の悪化がそれを許さなかった。

 REITは利益の大半を配当に回すため、内部留保を持たない。物件を買う場合、金融機関からの融資や公募増資などで賄うしかない。だが、ニューシティの借入金比率は、約55%とほかのREITと比べても高い水準にあり、借り入れをこれ以上増やすことは難しい。

 借入金比率を下げるには、公募増資を行い、出資総額を増やさなければならない。だが、市場で資金を調達しようにも、ニューシティの株価は10月9日終値で7万1000円に低迷。今の相場環境での公募増資は不可能である。

 売買契約の詳細は不明だが、契約通りに不動産を購入しなかった場合、20%程度の違約金が発生することが一般的。もし売買が流れれば50億円以上の違約金が発生してしまう。物件購入費用が手当てできない。保有物件を売却しようにも、不動産市況の低迷で買い手がつかない。成約期日が迫る中、資金調達のめどが立たなかった。

損を出しても借金の返済資金を確保

 金融機関の融資姿勢も破綻に大きく影響している。

 ニューシティは2008年9月21日に173億円の長期借入金、9月30日に125億円の短期借入金の返済を控えていた。173億円の長期借入金は返済期日の延長が決まったが、125億円の短期借入金を返済するために、保有する3物件を売却している。取得価格99億7300万円に対して売却価格は87億9000万円である。借金返済のためにロスを出してまで物件を売却する――。借り換えの厳しさを物語る。

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篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。

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