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現在家人(イギリス人)と日本の実家に滞在中です。
実家は神奈川県の某ブルーカラータウンにあります。家人はここを「日本のニュージャージー」「日本のエセックス」と呼んでおります。この村町にぴったりなのはブルース•スプリングスティーンが延々「アメリカで生まれた、アメリカで生まれた、アメリカで生まれた、おーいいぇー」と歌う例の歌だそうであります。地元駅前で一番栄えているのはパチンコ屋、周囲に広がるのは田んぼです。
この地元において、ワタクシの同級生は一家夜逃げしたとか、30過ぎて未だに一度も定職に就いたことが無いとか、未だに改造車に乗ってるとか、子供は一歳児なのに頭髪ブリーチ済みとか、葬式の香典が盗まれるとか、そういう感じです。この地元において、「良い」と言われている仕事は、某社の飲料水製造ライン、自動車製造ライン、田んぼの中で密かにネギトロを作っている工場(ここでは日本語は通じない)であります。
そのような町にある我が実家(床が抜けており雨戸落下)にて、家人、母、ワタクシでまったりと紅白歌合戦を見ておりました。
家人はこの番組を「ジエンドオブイヤーソングショー」と呼んでおりとても楽しみにしております。
なぜなら、このショーには、ヨコハマシスターズなる歌手がでて、謎のモールス信号の様な鼻歌を「ララッラらりほーアーホヤーアギいいいいい。こけー」と歌ってくれるからだそうです。(誰やそれ)「あきょー、ごげごげ、ぴんぴんぴん、おーーーー love you happy life ぎょへーあいーSayonaraほげー」と歌ってくれるラブラブボーイズなるアイドルの登場も心待ちにしています。(誰やそれ)ちなみに、このソングショーは高須クリニックの宣伝の次にお気に入りです。家人は高須医院長を「ジャパニーズドナルドトランプ」と呼んでおります。
さて、例年の様に家人はこのソングショーのことを批評し始めました。イギリス人の生き甲斐は悪口ですから悪口を言っていないと死んでしまうのです。
「うー、このソングショーは多様性を欠いている。出演者は尻をハックされたボーイバンド(歌も踊りも酷い男のアイドルグループ)、ガールバンド(歌も踊りも酷い女のアイドルグループ)、賞味期限切れの老いぼれ歌手、マンインドラーグ(女装したオカマ)しかない。外国人歌手はいない。ロックやレゲーやオペラや伝統音楽はいない。本当に流行っている歌手はでない。つまり、多様性が無いということだ。これが国民的ショーというのは大変日本的だ。日本の病理って多様性が無いことだからね。誰もこれが変だとかつまらないと言わないんだろう。つまり、そこだ、問題は」
プラズマを発生するコピー機を上に作れと言われても誰も反撃しない、必要の無い業務まで英語で遂行されることを命令されて業務が滞っても反撃しない、大間違いなことばかり言っている経済評論家がテレビから駆逐されない、自称多国籍企業なのに外国人が全然いないばかりか中途採用すらいない、税金がバンバン浪費されても誰も怒らない。
つまり、日本の病理というのは、意見は多様でも良い、違っても良い、ということが許容されないということなのかもしれません。「ジエンドオブイヤーソングショー」にはそういう病理が凝縮されていて、その病理に誰しも気がついているのに、誰も文句を言わないのです。
つまり、言わないという所が問題なのです。
谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。
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