資産家夫婦遺棄:事件「主導」の男逮捕 容疑認める
毎日新聞 2013年01月30日 22時03分(最終更新 01月31日 00時04分)
スイス在住で日本に一時帰国中に行方不明になった投資ファンドマネジャー、霜見(しもみ)誠さん(51)と、妻美重さん(48)とみられる遺体が見つかった事件で、警視庁築地署捜査本部は30日、事件を主導したとされる会社役員、渡辺剛(つよし)容疑者(43)を死体遺棄容疑で逮捕した。渡辺容疑者は逮捕前に2人の殺害についても言及。捜査本部は殺人容疑も視野に動機の解明なども進めるとともに、ほかに協力者がいたとみて調べを進める。
捜査本部によると、「2人の遺体を埋めたことに間違いない」と供述している。渡辺容疑者は29日夕、逃走先の沖縄県宮古島市内で自殺を図ったが、その際に駆け付けた宮古島署員に東京で殺人事件を起こしたことを明かしていた。捜査本部は回復を待って30日に逮捕し、警視庁に移送した。10日ほど前に宮古島に渡り、知人宅に潜伏していた。
捜査関係者などによると、渡辺容疑者は水産加工物販売会社(東京都江東区)を経営。この会社は家族が役員に名を連ねる同族企業で、同容疑で逮捕された桑原隆明容疑者(41)も98年ごろから一緒に働いていた。
同社は鯨肉の販売が中心だったが、中東地域でウニの養殖を始めるなど手広く水産ビジネスを展開。民間信用調査会社によると、年商は一時10億円程度あった。しかし、鯨肉市場の縮小とともに売り上げが落ち、3年半ほど前からは営業停止状態だった。30日に記者が登記上の所在地に向かったが、すでに別の会社の事務所になっていた。
一方、霜見さんは、1年ほど前から交流を始めた渡辺容疑者について「金を持っており、いい顧客になってくれそうだ」と同僚に話していたという。捜査本部は渡辺容疑者の資金状況や霜見さんと出会った経緯などを確認し、事件を引き起こした動機を調べる。
逮捕容疑は昨年12月7日ごろ、渡辺容疑者は桑原容疑者らとともに、埼玉県久喜(くき)市佐間の更地に霜見さん夫婦の遺体を埋めて遺棄したとしている。【小泉大士、喜浦遊、松本惇】
◇「人殺してきた」洗剤飲んで農道に倒れ
「東京で人を殺してきた。死なせてくれ」。逃走先の宮古島市城辺比嘉(ぐすくべひが)の農道で倒れていたところを発見された渡辺容疑者は、駆け付けた警察官にそう話したという。
宮古島市消防本部によると、渡辺容疑者はトイレ用洗剤を飲んで自殺を図ったとみられる。近くには渡辺容疑者が運転していた車が止まっていた。