GOD EATER LINK  (幻影の疾風)
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 2069年、本部は近接式と遠距離式の性能を合わせ持つ「新型神機使」の完成と同時に「新型神機使い」を確保。そして、あの事件が起こった。
 これは、フェンリル本部が世界に一般公開されていない、最初の新型神機使いとなった彼女の戦い、そしてある場所で起こった事件を一部始終描いた黙示録である……。



序章(プロローグ)

 2050年、「それ」は人類の繁栄に歯止めをかけるように、突如世界中から現れ、襲い掛かってきた。我々人類はこれをアジア大陸の極東の伝承に残る、八百万の神に喩えて《アラガミ》と名づけた。同時期、その《アラガミ》の体を構成する《オラクル細胞》の研究を進めていた「フェンリル」が設立。この時から、フェンリルと《アラガミ》による人類、地球の未来をかけた終わり無き戦いの火蓋が切り落とされた。

 2052年、人類は《アラガミ》によって次々と尋常にはならない被害に襲われ、連合軍は武力で解決を試みるが無力。もはや成す術もないと誰もが絶望という海に沈んでいった。

 2056年、ついに人類は《アラガミ》に対抗すべく、フェンリルの長き独自研究の末、創立者の一部のみが実行した「マーナガルム計画」の成果から新たな戦力の原点となる生命を生み出すことに成功。その名は「神機使い」。人々からは、神を喰らう彼らを……
              
                  ――《ゴッドイータ》と呼んだー――

 2060年、生態兵器《神機》を操り、《アラガミ》を唯一打ち砕くことができる超人の登上で、わずかながら人類の減滅に歯止めが掛かりだした。更に世界中で人類の防壁となるフェンリルの支部を健立。

 2067年、極東支部にて人類安息の地となる超巨大アーコロジー建設プロジェクト、「エイジス計画」の途中、急激に極東支部に《アラガミ》の出現率が倍増、そして世界トップに。我々はこれを疑問に感じ調査を行おうとするが、当時の極東支部支部長「ヨハネス・フォン・シックザール」の意向により中断せざるを得なかった。

 2071年、ヨハネス・フォン・シックザール支部長が主導していた「エイジス計画」は偽装だと判明、真の目的となるのは、我々を驚かせたものだ。人工に育成した《ノヴァ》を「終末捕食」で屍となった地球の完全再生、その合間にシックザールによって選ばれた千人を次なる新世界の種として残す「アーク計画」を、全世界に発表する。

 その中、シックザールに選ばれてない我ら本部はなすすべもなくその男の野望を見届けるしかできないかと一時期(ひととき)絶望していたが、思いも寄らずに極東の第1部隊がアーク計画を阻止、こうして世界は救われた。

 これを期に我々は今後、この様な反逆を起こさぬ様「神機使い」の更なる強化、忠実感を仕立て上げ、絶対なる戦力を造りださなければならない。

 何としても、奴(・)ら(・)より、先に手にしなければならない。あの力(・)を。

 2069年の、あの事件をきっかけに、我々は本格的に動きだしたのだ――――


                    ――フェンリル本部 最高機密計画報告書――


◆◇◆◇


 …ここはどこだ…?



 何故ここにいる…?



 眠いのに…



 眠れない…。



 それに何だ、この…
 


 剣は?
 


 剣なのに、生きているように、

 

 ……暖かい。



  …暖かい?



 あぁ、そうだった。



 私は…
 


 人間だったんだな。
 











 …あれ、



 私は……?
 




 誰?
 





 私は…
 
◇◆◇◆

 ババババババババババ…


「…ん…」

 いつまでも鳴り止まない騒音に、少女は閉じていた目蓋をゆっくりと開けた。

 深くも浅くもない眠りから目覚めた少女は、少しずれた眼鏡をかけ直し、ぼやけていた視界がはっきりと見えだす。しかしまだ寝ぼけているのか、ここは何所なのかまだ理解しきれてない。周りには、左右に外が一望できるほどの景色が写り、それぞれ前後には席が並んでいた。

 景色には、スクロールのように流れ、どこまでも続く砂漠と、そこに埋もれ、虚しく佇む廃墟が次々と立ち並んでいた。

 そして辺りを見回すと、ようやく理解する。

(そうだった、まだヘリの中だったな)

 ようやく気づく。そして少女の視線に、それぞれ四人の人間が映っていた。

 四人はその席に座っており、それぞれ何かをしている。一人は黄金の剣の刃を梳り、一人は何かのカタログを熱心に読んでいたり、また一人は手鏡を見ながら髪を梳かしていたり、そして一人は、ただ景色を眺めていた。

 ただ1つ、少女を含む五人が共通しているのは、一人ずつ片方の腕に赤い腕輪を着けている、ことだ。

 そして先程から少女の右側に強風が流れているのを感じていたのか、少女の髪を荒振り流す。少女はスライド式のドアを閉め、強風でボサボサになった黄褐色の髪を整えなおす。

 ふと、左肩に背負っている物に視線を向ける。それは現実としてはありえない物だった。

 一見するとそれは剣にも見えるが、それだけでは説明はつかない。矛には銃が装備され、半分に分かれている盾が左右に取り付けられていたり、どこか非空想な武器でも見える。少女はこの武器を自分の膝に置く。更にありえないことに、少女は頭身を越える武器を片手で持ち上げ、瞬きの速さで武器を回転させ、自分の膝に置いた。

 並みのなら簡単にできるはずもなく、逆に武器の巨体が持つ者に重量で潰されて身動きできない状態になるのが当然だが、少女は何ともなく成功する。

 膝に置いた武器を、右手で軽く置く。すると、その武器から彼女に、発している生命の鼓動を感じさせた。

「やっぱり、いつになっても暖かいな、こいつは」

 我が子を見守るような、優しい母親の顔を、静かに浮かべていた。少女にとっては今この時、安らぎの休息になっていた。

◆◇◆◇ 

「…そろそろか」

「目的地まで,後400メートル! 目標の総数…ミッション通りにおよそ100以上!」

「ターゲットは、《オウガティル》、《ザイゴード》、《コクーンメイデン》、《コンゴウ》、‘《クアトリガ》、《ボルグ・カムラン》、《サリエル》、他堕天種多数確認!」

 景色を眺めていた筋肉質の大男が何かを察したと同時に、ヘリの操縦者が報告する。すると先程まで趣味に取り組んでいた三人と彼女の目つきが変わる。同時に彼らの空気に緊張感が走り出す。

「50以上かぁ~~~。多いな」

「はい、四年前のロシアによる掃討作戦以来ですね」

「…フン」 

 三人は驚いてはいるが、それに恐怖というものはあまり感じてないようだ。むしろ、その顔つきは幾度の戦場を経験した達人のもの。

「いよっし! これもまた、このロンメル・メテオマン様の英雄伝説の1ページを刻むのに、丁度良いネタになるぜ!!」

「またか」

 青い炎のガラを刻まれた紅色のマントを体に身に纏い、髪型が銀髪で身なりが整ってなく、奇妙な髪型をした青年「ロンメル・メテオマン」が席から勢いよく立ち上がる。がら空きの片手を天井に高く上げ、誇らしげに言う。

「フン、……くだらん」

「ん?」

「所詮「神」と偽る化け物共に鉄槌を下せば良いだけなのに、お前はまだ判らんのか?」

 敵意を生むギョロ目が特徴で、女性の様に長く黒い髪を細く縛りとめ、歳は前者のロンメルより若々しさがあるが、敬意は全くない。冷静に彼を睨みつける、中国人の「ロン・リー」が厳しく言う。

「んだよぉ~、またか。お前だって、そいつ等ばっか構ってるんじゃ、孤立して虚しいだけだぜ?」

「それが俺の使命なら、他に何も望まない」

 何やらロンメルがリーにちょっかいをだし、それを直轄に返している。

「二人とも、今回は大群なんですよ? お気持ちは分かりますけど、ここは皆で協力しなきゃ無事に帰れませんよ?」

 場違いではないかと周囲の人達が思うほど、優雅なドレスを着ているが、先ほど梳かしていた髪は身体を超えるかもしれない大きな金職の紙が他の4人より目立っている「クララ・シュワルツ」が、二人の会話に歯止めを掛ける。

「フ、クララちゃん。君の意見もごもっともだが、今回ばかりはね…」

「下らん。何があろうと、神を打ち砕けば良いだけだ」

「…お前なぁ、だから周りからは、「頑固ハゲ」と馬鹿にされているんだよ!! このバトルジャンキー!!」

「黙れ、この女たらしのキザ取りがぁ!!!」

 ロンメルがリーの頭を二つの拳でグリグリと回し、リーがロンメルの頭に鷲摑みで締め上げる。大人気(おとなげ)ない子供同士が喧嘩してるかの様に見えて、あまりにもみっともない程だ。

 クララがあたふたと困っている中、二人の額に一瞬でハンマーで殴られた様な衝撃が襲い、そのまま倒れこむ。

「たくオメェらは、ガキかよ」

 いつの間にか二人の間に人が立っていたのを、喧嘩中の二人には気づいてはいない。しかし人とは言い切れるのか、全身は高温化の砂漠にも関らず分厚いコートを着ているが、その肉体ははち切れんばかりの筋肉に、そのウェストは芸術か、細く、一目から全身で見上げれば、逆三角のスタイルに整っている。

 右目に機械仕掛けで無垢なモノアイ眼帯を付けている、「サム・ヒンデンベルグ」。その手にはデコピンを放った後かのような姿勢で止まっていた。

「サムゥ、デコピンでやることはないだろ!? 結構痛ぇんだから!!」

「…くそ、いつになっても、隙が全くない…」

「てめぇらは、いい年頃の若鳥がみっともねぇっつーの」

「…く」

(あんただけには言われたくねぇ~。エロ大魔王め…)

「あ? 何つった??」

「ゲッ!? イヤ…その…」

 サムがロンメルの頭を鷲摑みにし、慌てて言いかけたそのとき、

「た、隊長!」

「ん?」

「目的地に、一般人が、アラガミと交戦中です!!」

「あぁ!?」

 サムを除いて、四人は驚く。この世の中に、一般人が外に出るなどありえない。一歩でも外に踏み出したら、人が生きるには過酷すぎる環境に、「神」に成す術もなく「捕食」されるからだ。

 しかし更に気になったのは、操縦員が報告した「一般人が、アラガミとの交戦」とは、一体どういうことなのか。《アラガミ》というべき「神」と渡り合えるのは、自分達しかいないはずだが―――

「…おい、モニターに映せるか?」

「はい!」

 乗客席の上部に設置されているモニターが映し出される。すると、三人は驚く。

「おいおい…本気かよ…」

「今にもいたか…旧世代め」

「そんな…」

 思いもよらない事態に地惑うクララ。深刻な表情を浮かぶロンメル。そして明らかさまに邪見している目つきをするリー。ただ一人、サムは何か考えこむように見つめるが、それはほんの一瞬の一時(ひととき)で、

「メンドー。出てきた奴が悪い。」

「えぇ!?」

「おい、またか! いくら何でもそれは無いだろ!?」

「く、いい加減な男め…」

 3人は講義をするが、サムのメンド臭がってる表情は変えない。

「俺らんところにお世話にされてる奴が、その恩を知らずに勝手に飛び出しては勝手に化け物共に死を向かってるようなもんだ。むしろ俺は助かるとは思うがね。」

「な、何で!?」

「今までどこに潜んでいたのかは知らんが、これで過去の遺物は消える、て訳だ。俺たちも、お偉いさんにとっても、これで完全に民衆は俺達に絶大な信頼を独占できる、て訳よ。」

 要するに、今となってはもはや必要が無い過去の党首が、自分から手を出さないまま勝手に消え、新世代の党首が民衆を支配できる、ということだ。確かに利益を得るには一番手っ取り早い、偶然ながら都合の良い方法ではあるが、非人道的でもある。

 もちろん3人はこれを賛同する訳はなく、さらに反論する。しかしサムがそれを気にせず、

「まぁ~、あれだ。何かしらのトラブルだし、これはな、無視しといて俺らは《アラガミ》を…」

「だったら、助けとけば良いじゃないか。」

 その一言で三人は振り向く。サムだけは席に我が物姿勢で座り込み、声の主と目を合わさない。その口元に、わずかながら笑みが浮かんでいた。

「《ゴッドイーター》は、人々を《アラガミ》の脅威から守りぬけるのが、使命…だろ?」

 赤いタンクトップの上にボロボロの黒き旗をジャケットのように着せている。その旗には、まるで髑髏にも見える狼の頭が三日月を喰らっているエンブレムが付けられている。スカートから右足は黒いタイツを着用し、半分は足肌を露にしている。ポニーテールに縛ってある黄褐色の髪に、眼鏡からは揺ぎ無い光を灯している青き瞳が輝いている。そして14の少女であるにも関らず、座席の過度を肘でのけ、まさに活発な男がやる仕草が特徴的だ。

「ケイト・ローデンバーグ」。この中で最年少にも関らず、堂々と四人に己の義務を復唱する。

「はん、子供に言われなくても、それぐらいは分かってるつーの!」

「でも、確かだと思いますよ、ロンメルさん」

「え?」

「英雄を目指すんだったら、小さき一歩の積み重ねが己を強くする、お前は素っ飛ばしすぎだ」

「ギク!!」

「ロンメルさんって、いつも英雄を目指してるからと言って、実技は確かですけど~、訓練はサボってよく女の子と声を掛けて…」

「って、おい、ちょっと待て!俺よりサムのおっさんじゃないのかよ!?だいだいサム、あんたも…」

「ふむ、よく言った」

「て、裏切り早!!」

 先ほどの緊張感が嘘の様に無くなり、わめくロンメルを囲んで楽しげにからかう三人。その中、サムはケイトに振り向きながら指を刺す。

「で、デカイ口(くち)を叩くのは良いけどよ、覚悟はあんのかぁ? もう新人じゃないとはいえ、今回は今までとはケタ数がかなり違うぜ」

「今更どうだって言っても仕方ないだろ?」と、ケイトは余裕の微笑で自信に満ちた声で答えた。

「私達は目的地のいる化け物を殺しに行き、生還をとる。んで、たまたまそこに弱者がいたから、ついでにそいつも生還させる、だろ?」

 その強い光を輝く瞳をサムにむけ、ウィンクする。女性なのに、活発な少年の表情をしていて、サムはケイトが男に見えた。しかし本人がうるさく言われるのが面倒なのか、あえて口を出さずに、これ以上言っても無駄であると分かりきったのか、呆れたように席に力無く座り込み、肩をすくめる。

「…ふ、言わせるな、「新型」」

「へん、英雄様の足を引っ張るのは簡便な!」

「もちろんですよ! 皆、同じ思いでここにいるんですから」

「け、しゃーねぇな。…よし!!」

 サムが立ち上がると、四人の顔を視線で一人ずつ流しながら、四人の前に拳をだす。

「とりあえず生きろ、やばかったら逃げろ、んで、後は尻尾巻いて逃げるか、牙向いて戦え!!」

「おう!!はい!」

 全員が同時に力強く返事し、サムの拳に四人の拳が当たり、答える。

◇◆◇◆

 神によって喰われた世界…そこには、かつて人間が世界、いや、地球という星を支配した痕跡は「神」が喰い嵐、そこに残っているのはただ「食べ残し」だけの荒廃化した死の世界。


 新しく、そして最後の希望である、「神を喰らう者」…
 


 やがては全てを終末に向かわれたあの時…


 そう、これは終末捕食が起こる二年前、



 ある場所で、



 誰も知られる事がない、




 一人の少女の運命が生み出した、












 隠された歴史が…

 Das nächste Mal 「ケイト・ローデンバーグ 前」




 挿絵は下の表をコピペすれば普通に観覧できる……はず

 ttp://mitemin.net/imagemanage/top/icode/29677/

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