安倍晋三首相は、成長戦略の起爆剤として注目される環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、今年夏の参院選前に方向性を出す考えを表明した。2月下旬の日米首脳会談も念頭にあるようだ。ただ、自民党内には200人以上の反対・慎重議員がいるだけに、TPP問題が、政権の失速要因となる可能性もある。
安倍首相は29日夕、日本テレビ系「news every.」に出演し、TPPについて「参院選の前にいろんな争点を隠す考えはない。選挙前に基本的な方向性は示したい」と語った。「今、TPP参加でどういう影響が出るか精密な分析を各省庁にさせており、その結果を見ながら判断したい」とも強調した。
関係者によると、政府は30日までに、TPP交渉について米国に対し、交渉参加の前提条件である「聖域なき関税撤廃」を、2月下旬の日米首脳会談までに撤回するよう求める方針を固めた。オバマ米大統領が柔軟な姿勢を示せば、安倍首相も交渉参加に踏み出しやすくなるという考えだ。
日本経済再生に向けた「3本の矢」のうち、「成長戦略」を協議する政府の産業競争力会議では、TPP交渉への早期参加を求める声が相次いでいる。
ただ、自民党内にはTPPに触れることで、参院選で農業票を敵に回すことを恐れる空気もある。特に、衆参ねじれ解消のカギを握る定数1の1人区は農業が盛んな地域も多く、これを助長している。「TPP参加の即時撤回を求める会」(森山裕会長)には、自民党所属議員の過半数にあたる200人超が参加しており、今後の火種となりそうだ。