【吉野太一郎】謎に包まれた国・北朝鮮。そこに暮らす人々の姿に焦点を当てた写真集「隣人。38度線の北」(徳間書店)を、写真家の初沢亜利さん(39)が出版した。訪問4回、駆け引きや交渉を繰り返しながら、首都・平壌や地方都市の日常をカメラに収めた初沢さんは「懸案があるからこそ、対話が重要だ」と訴える。
初沢さんは2001年からフリーで活動し、これまでに戦争前後のイラクや東日本大震災の被災地を訪れて写真集を出している。02年以降、過熱した拉致問題の報道を見て「危険で変な国という側面ばかり強調されている。偏見を排して人々の生活を見てみたい」と感じたのが北朝鮮取材のきっかけ。
現地入りは難航した。政府関係者の招請がなければ入国できない。10年春、つてをたどって民間交流の訪朝団に交ぜてもらったが、ついた条件は「カメラ持ち込み禁止」。それでも現地で案内人らと酒を酌み交わすうちに「次回はぜひ撮影を」とOKが出た。