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'13/1/30

政府予算案 「自助」が基本というが

 日本経済の再生を期すとはいえ、大盤振る舞いが過ぎないかと心配にもなってくる。2013年度の政府予算案がきのう閣議決定された。

 被災地の復興に限らず、全国津々浦々で公共事業を増やす。産業への支援を手厚くする。経済再生を「一丁目一番地」と位置付ける安倍政権ならではの景気浮揚策を詰め込んだ。

 半面、生活保護費の基準を8月から切り下げ、受給世帯の大半が減額となる。地方公務員の給与削減を目的に地方交付税をカットする。これでは、削りやすいところから削るのが安倍カラーとも思えてくる。

 それでも借金依存体質からは脱却できない。民主党政権時代にも増して、財政健全化の道は遠ざかるばかりだ。

 新年度予算案に本年度の補正予算案を加えた「15カ月予算」でみると、やりくりが既に限界に達したことは明らかだ。

 補正で約2兆4千億円を計上した公共事業費。新年度で5兆3千億円近くを積み増す。老朽化が進むインフラの点検や補修に充てる地方自治体向けの防災・安全交付金を盛り込んだ。被災地の復興に向けた特別会計も充実させる。きめ細かい配慮といえるのかもしれない。

 一方、自治体への「一括交付金」は廃止する。さらに経済危機に備えた予備費をゼロにするという奇手も繰り出す。

 そうして歳出を抑制しても借金は膨らむ。新規国債発行額は4年ぶりに税収見込みを下回るが、これは新年度予算案に限った話だ。補正も含めれば約48兆円と税収を軽くオーバーする。とても自慢できる状況にない。

 昨年末の政権交代により越年を余儀なくされた予算編成。民主党政権が重視した「生活者への分配」を継続することもあって、中途半端の感は否めない。

 農家への戸別所得補償を名称だけ変えて続けるのが象徴だろう。70〜74歳の医療費窓口負担を1割から2割へと増やすことも先送りした。

 ことの是非は別として、現在の財政状況と合わせて考えれば、夏の参院選目当てだとの批判は免れないのではないか。

 原発関連も首をかしげざるを得ない。輸出を後押しする調査費を計上したほか、高速増殖炉「もんじゅ」の技術を使った新型炉の開発費も計上した。

 これは原発温存政策にほかならない。既成事実を積み上げていくのではなく、政府がエネルギー政策の方向性を示すことが先決のはずだ。

 経済成長すれば税収も増えるから、それまでの辛抱だと政府は言いたいのだろう。だが巨額の財政出動がどれだけ景気を浮揚させるかは分からない。公共事業の効果は以前ほどは期待できないとの指摘も聞かれる。

 政府の債務残高は国内総生産(GDP)の2倍を超え、主要国の中で相当高い水準にある。国債の暴落など、「アベノミクス」の副作用に対する内外の懸念が消えないのは、こうした借金頼みの財政運営が理由だ。

 生活保護の切り詰めに象徴されるように、国民に「自助・自立」を促す安倍政権。だが国の財政こそ自立には程遠い。

 このままでは借金を背負う将来世代の自助もおぼつかなくなる。財政再建をどう進めていくのか、政府は実行可能な道筋をきちんと国民に示すべきだ。




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