東京電力・福島第1原子力発電所の周辺市町村で進む放射能除染作業について、産業技術総合研究所の中西準子フェローと保高(やすたか)徹生研究員らのグループがその効果と費用を分析した。国の計画通りに作業を進めても帰還ができる住民は決して多くないことがわかった。費用面では除染作業そのものより除染で生じた土壌などの保管にコストがかかる。これからの除染と住民の帰還を考えていくうえで参考になりそうだ。
――除染の効果がなかなか上がらないとの声を聞きますが、現状の計画通りに作業を続けてどれくらいの生活圏が帰還可能なレベルにまで下げられるのでしょうか。
「私たちはまず、国が進めている除染を当初計画通り、来年度末(2014年3月末)で終了した場合、空間線量がどこまで下がるかを、国が実施した実証実験などのデータをもとに試算し、地図の上に100メートルのメッシュで落してみた。その結果を3.11前の土地利用と人口密度の地図情報と重ね合わせて、避難した住民のうちどこまでが帰還可能かを検討した」
「国の直轄除染対象地になっている11市町村(かつての警戒区域と計画的避難区域にほぼ相当する)には約9万2000人が住んでいた。除染後に年間10ミリシーベルト程度の外部被曝(ひばく)が想定される地域を帰還可能とした場合、3万~4万人の住民が自宅に戻れる計算になる。年間10ミリシーベルトは、30年間居住を続けた場合に累積で約127ミリシーベルトの被曝量になり、これは決して喜べる数字ではない。国が約束した年間1ミリシーベルトを帰還可能の目安にすると、帰還可能地域に含まれる人口は2万人くらいにとどまる」
「さらに、被曝線量がどのくらいだったら帰るかを住民に尋ねた複数のアンケート調査をまとめると、年間10ミリシーベルトの場合、帰還希望者は20%程度、1ミリシーベルトでも30%程度となる。これを加味すると、仮に10ミリシーベルトを帰還可能な目安にした場合、実際に自宅に帰る人は3万~4万人の20%程度、すなわち1万人を割る可能性がある」
――試算の根拠となった除染のやり方などを少し詳しく教えてください。
「建物は屋根や壁の高圧洗浄。庭は樹木の剪定(せんてい)と表土の除去を行う。水田は5センチの深さまでの表土を取り除く。森林は宅地との境界から奥へ20メートルまでについて落ち葉と腐葉土を除去する。道路はショットブラスト(路面を削りとる)と超高圧洗浄を施す。また空間線量から人の外部被曝を導く際に換算係数を0.6とした。これは1日のうち8時間を屋外、16時間を屋内で過ごすと仮定するものだ。チェルノブイリ周辺地域を含め国際的には0.2~0.3程度の換算係数が使われているようで、私たちはその方が適切だと思うが、日本政府はより安全サイドに傾いた0.6を用いているので、それにならった」
東京電力、福島第1原子力発電所
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