時の流れを感じさせる、安倍晋三首相の所信表明演説だった。
小泉純一郎氏の後を継ぎ、2006年9月に52歳の若さで首相に就任した安倍首相の初の所信表明演説は肩に力が入っていた。
「美しい国創り内閣」を提唱し、首相官邸の新体制から集団的自衛権の憲法解釈の変更、憲法改正問題まで幅広く取り上げ、随所に安倍色を強調していた。
1年で政権を投げ出した挫折を経ての再登板後、初めてとなる今回の所信表明演説では「過去の反省を教訓として心に刻み……」と切り出した。
今国会中に今後1年間の国政運営の基本方針を示す施政方針演説を予定していることから、今回は経済再生、震災復興、外交・安全保障の3テーマに絞り込んだ。これに教育を加えた4分野を挙げて首相は「危機突破にまい進する」との決意を示した。演説は簡潔で、メッセージはわかりやすい。
最大かつ喫緊の課題という経済再生に関しては、大胆な金融政策、機動的な財政運営、成長戦略の「3本の矢」で推進する考えを重ねて示し、日銀との共同声明などの成果を誇った。
外交・安保では日米同盟の一層の強化を訴え、自由、民主主義、法の支配などの価値観を共有する国との連携に基づく戦略的な外交を展開していく基本姿勢を明確にした。そのうえで「国民の生命・財産と領土・領海・領空は断固として守り抜く」と表明した。
演説で物足りなかったのは、環太平洋経済連携協定(TPP)や、エネルギー政策への言及が一切なかったことだ。
とりわけTPPは成長戦略の柱であり、2月に予定されるオバマ米大統領との首脳会談で主要議題となる外交案件でもある。TPPを巡る各国の交渉をにらめば、残された時間は少ない。一刻も早く交渉に参加し、日本の主張を反映させることが国益にかなう。
自民党内にはTPP交渉参加への強い反対・慎重論がある。夏の参院選への悪影響を懸念する声も多い。農業団体などの反対運動も続いている。首相が交渉参加に向けて、強い指導力を発揮しなければ、いたずらに時間を空費することになりかねない。
各種の規制改革を含め、3本目の矢の成長戦略でもロケットスタートを切らなければ「アベノミクス」は早晩、失速してしまうだろう。TPPが試金石になる。
TPP、安倍晋三、小泉純一郎、オバマ、日銀
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