報告書案“敦賀原発 活断層否定できず”1月28日 18時0分
国の原子力規制委員会の専門家会議は、福井県の敦賀原発の断層を評価する報告書の案を示し、「安全側の判断として、活断層である可能性が否定できない」と結論づけました。
今後、事業者だけでなく、ほかの専門家からも意見を聞いたうえで、報告書をまとめることになりました。
原子力規制委員会の専門家会議は、28日午後、敦賀原発の断層を評価する会合を開き、先月の現地調査などを踏まえた報告書の案を示しました。
それによりますと、国の調査で確認された新たな断層について、周辺の地層の分析から活断層の定義となっている12万から13万年前以降に活動した可能性が否定できず、また、その方向などから、2号機の原子炉の真下を走る断層の延長である可能性が否定できないとしています。
そのうえで、「2号機の真下を走る断層は、安全側の判断として、活断層である可能性が否定できない」と結論づけています。
規制委員会の専門家会議が原発の断層の報告書の案を示すのは初めてです。
規制委員会の島崎邦彦委員は、「気がつかない穴があるかもしれず、ほかの人にも見てもらい、よりよいものにしたい」と述べて、事業者の日本原子力発電だけでなく、学会から推薦された、規制委員会の活断層調査に携わるほかの専門家からも意見を聞く考えを明らかにしました。
このため、報告書がまとまるまでにはさらに時間がかかる見通しです。
国の指針では、原子炉の真下に活断層があることを認めておらず、規制委員会が報告書を基に、最終的に「運転再開を認めない」と判断すると、去年9月の発足以来初めて、原発の運転を制限することになります。
敦賀原発2号機は、運転が再開できないと廃炉になる可能性もあり、規制委員会の最終的な判断が注目されています。
断層の評価巡る双方の主張
原子力規制委員会の専門家会議の報告書の案では、「2号機の真下を走る『D-1』と呼ばれる断層」が活断層かどうかがポイントになりました。
日本原子力発電が調査で見つけた断層の状況から、「活断層ではない」と主張したのに対し、専門家会議は、独自に注目した別の新たな断層を中心に根拠をまとめ、「活断層である可能性が否定できない」と結論づけました。
日本原子力発電は、2号機の真下を南北に走る「D-1」と呼ばれる断層を詳しく調べるため、2号機から北に300メートルほど離れた場所で大規模な掘削を行いました。
そして、この調査地点で見つけた断層が「D-1」につながっているとしたうえで、少なくとも9万5千年前よりもあとに動いた痕跡がないことから、「『D-1』は活断層ではない」と主張しています。
これに対し、専門家会議の報告書の案では、まず、日本原子力発電が調査地点でみつけた断層を「D-1」と特定した根拠が明確ではないとしています。
また、同じ調査地点で独自に注目した別の新たな断層について、およそ9万5千年前の地層の近くまで及んでいるうえ、活断層の特徴である断層面に粘土が観察されたとしています。
そしてこの新たな断層が、南北に延びる方向や傾きが「D-1」と同じであることから「D-1」の延長部の可能性があるとし、敷地内を走る活断層の「浦底断層」に誘発されて活動するとしています。
そのうえで、「D-1」と呼ばれる2号機の真下を走る断層は、安全側の判断として活断層である可能性が否定できず、活断層の浦底断層と同時に活動し重要な施設に影響を与えるおそれがあるとまとめています。
日本原子力発電は、専門家会議が注目した新たな断層について、新たなデータを集めるために追加の調査を来月まで行うことにしています。
日本原電“疑問に十分答えていない”
原子力規制委員会の専門家会議が示した報告書の案について、日本原子力発電の荻野孝史広報室長は「きょうの議論を見たかぎりでは、先月提出した公開質問状の疑問に十分答えておらず、今なお活断層か否かを判断するうえで重要なポイントについて、科学的データに基づく判断となっているとは思われない」と述べました。
そのうえで、「継続中の調査でデータをそろえ、科学的観点からの総合評価を取りまとめ、原子力規制委員会に提出し公表したい」と述べました。
敦賀市長“今後の審議を注視”
福井県敦賀市の河瀬市長は、「今後、ほかの専門家の意見や事業者からの意見も聞くということであり、市としては今後の原子力規制委員会での審議を注視したい。
また、現在も日本原子力発電による追加調査が行われていることから、それらの調査結果についても予断を持たず、幅広い見地から慎重に審議していただきたい」というコメントを発表しました。
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