話題:北九州市議選 選挙公報を発行せず
2013年01月25日
北九州市議選が27日に投開票されるが、同市選管は候補者の経歴や政見などを記した選挙公報を発行していない。全国20政令市のうち、市議選の選挙公報を発行していないのは北九州市と広島市だけ。財政難などが背景にあるとみられるが、識者は「民主主義に必要なコストなのに」と疑問を呈している。
選挙公報は原則、候補者が選管に提出した内容がそのまま掲載される。公職選挙法で国政選挙と知事選は、選挙公報の発行が義務付けられている。それ以外の市町村長選挙、議員選挙も、条例を制定すれば発行できる。
総務省によると、11年末時点で県議選では36都道府県が条例を制定。全国の市区809のうち682、町村では933のうち381の自治体も制定している。九州・沖縄・山口の県庁所在市は2市を除き市議選の選挙公報を既に発行。その2市も条例制定しており、次回市議選から発行予定だ。
北九州市選管は、市議選公報を発行しない理由に「日程」と「費用」を掲げる。同市は、選挙期間が14日間の市長選では公報を発行しているが、市議選の選挙期間は9日間。市長選同様に自治会などを通じて公報を配布すると、公選法が定める投票日2日前までの各戸配布が困難という。市議選公報配布に業者を利用すれば可能だが、印刷費も含め費用は約2600万円に上る。同市選管は「福岡県議選も発行していない」と弁明する。
一方で、公報発行を推進する自治体は増える傾向にある。福岡市は06年、印刷技術の向上などで期間内に配布できるめどが立ち「有権者に対して政見を伝える手段として意義が大きい」(同市選管)として条例を制定。07年から約1750万円の費用をかけ、市議選でも発行を始めた。
久留米大法学部の石川捷治教授(政治学)は「市民が主体的に選ぶための材料の提供として、民主主義にとって必要なコストと考えて良いのではないか」と指摘している。
北九州市の男性有権者の一人は「立候補者の経歴などわからないと、誰に投票していいのかわからない」。女性有権者の一人も「候補者がどんな人物かわからない。投票には行かないつもり」と語った。【川島紘一】