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マメゾウムシ・目次
はじめに 害虫として
飼育法
害虫としてのマメゾウムシ

マメゾウムシは豆の害虫として世界中に広く分布し、野外で栽培されている豆や、収穫されて貯蔵庫に蓄えられている乾燥豆を食害しています。

マメゾウムシの害虫化は今から数千年前に起ったと考えられています。害虫種の祖先は野生の豆を利用して生活していました。おそらくその当時から害虫となるための潜在的な能力を備えていまいしたが、ヒトとマメゾウムシはあまり関わることなく生活していました。しかし、ヒトが豆の栽培を始めたことによって、マメゾウムシの一部がヒトにとって好ましくない存在となり、ヒトとマメゾウムシが共通の食物を巡って争うことになったのです。

農業には、特定の植物を自然状態では起らないような大規模かつ高密度で栽培するという側面があります。そのような環境では栽培植物に関連した種のみが多量の食料を得ますが、一方で、本来その土地に自生していた植物を利用していた種は食料を失います。その結果、特定の種のみが大発生し、人間にとって大害虫となってしまうのです。

害虫となったマメゾウムシのうち、乾燥した豆を利用できる種は貯蔵環境に適応した貯穀害虫となりました。植物の季節周期から解放されて繁殖を繰り返すこと、栄養摂取なしに成虫が繁殖できること、低い飛翔能力などは、貯穀害虫種にみられる特徴であり、野外のマメゾウムシとは対照的です。 貿易と交通の発展により貯穀害虫種のマメゾウムシはその分布域を急速に拡大していきました。これは害虫化の起源と比べて最近の出来事です。また貯蔵庫では、マメゾウムシにとって自然状態で出会わないような多様な豆を利用する機会が生じたため、多種の豆を食害する害虫種を生み出すことにもなりました。現在でも分布域の拡大を阻止するために検疫の対象とされています。

マメゾウムシによる経済的被害は決して小さいものではありません。昔から様々な防除方法が考案されてきました。化学薬品による燻蒸が一般的ですが、天敵導入による生物学的防除やマメゾウムシに抵抗性をもつ品種の開発なども行われています。