社説

オバマ政権2期目/理想は対立を克服できるか

 米オバマ政権の2期目がスタートした。大統領就任式に集まった人は半分以下に減った。史上初めての黒人大統領誕生に沸いた4年前の熱気が失われていたことは、否めない。
 それでも、2期目の就任演説は力強いものだった。
 米独立宣言を引用し、「自由と平等」という市民社会成立以来の理想を強調した。
 自由と平等を今日の現実と結び付ける政治を「終わりなき旅」と位置付けたことは4年前と変わらない。だが言葉の端々には、共和党の主張に対する批判と反論が込められていた。
 「社会保障は自発性を弱めるものではない。われわれが自由にリスクを取れるようにし、この国を偉大にするのだ」
 「科学的判断をなお拒絶する人もいるが、地球温暖化への対応に失敗すれば将来世代への裏切りとなる」
 理想主義を高く掲げ、富の独占や既得権益に対し挑戦する姿勢は、今回の演説の方がはるかに強く、具体的だった。
 オバマ政権の1期目は、議会とのねじれにより重要法案で何度もつまずき、「景気回復の実が上がっていない」という国民の批判を招いた。
 党派対立は、解消されず残ったままだ。それを押して共和党批判を含んだ政治色の強い就任演説を行った背景には、少数派や中間層という自らの支持基盤への働き掛けをさらに強めようとの狙いがある。
 いわゆる「財政の崖」をめぐる攻防で共和党への妥協を急がなかったのは、支持層の結束に対する自信の表れだ。世論が共和党支持に向かうことはないと、見切っていた。
 2期目は銃規制、地球温暖化対策など、共和党と真っ向から対立する政策への挑戦が続く。
 世論を背景に党派対立を正面突破する戦術は、共和党に変革を迫るものとなる可能性がある。一方で、支持を失えば政権が早期にレームダック化しかねないリスクも持つ。
 単純な人気取りの政策に堕することなく、就任演説を貫いた理想を実際の政権運営で現実のものとすることができるかどうか。真価が問われる。
 クリントン国務長官、ガイトナー財務長官ら重要閣僚が交代するが、外交面での「アジア重視」など、政策が大きく変化することはないとみられる。
 だからといって、沖縄県の尖閣諸島をめぐる日中対立に米国が積極的に関与することはあり得ない。日本はアジア重視を過大評価すべきではない。
 来月下旬に訪米する安倍晋三首相には、普天間飛行場移設や環太平洋連携協定(TPP)など、民主党政権以来の宿題が積み残しとなっている。
 普天間移設には沖縄県民の納得が、TPPの是非には党内の意見統一が求められる。
 少数派重視の変革に自信を深める2期目のオバマ大統領と相対する時、安倍政権は弱者の苦境とどう向き合っていくのか。日米同盟という鏡が、日本の「国益」の在り方を映し出す。

2013年01月28日月曜日

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