◇大相撲初場所<千秋楽>
引退記者会見で、笑顔を見せる高見盛=27日午後6時5分、東京都内のホテル
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元小結で、気合を入れる独特のしぐさなどで人気を集めた東十両12枚目の高見盛(36)=本名加藤精彦、青森県板柳町出身、東関=が東京都内で記者会見し、引退を表明した。今後は年寄「振分(ふりわけ)」を襲名し、後進の指導に当たる。今場所は2日目に右肩を痛めて5勝10敗と星が伸びず、幕下への陥落が確実になった。5度目の優勝を決めていた横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=が横綱白鵬(27)=宮城野=を寄り切って3度目の全勝を果たした。白鵬は12勝3敗。
引退する覚悟はできていた。高見盛は千秋楽の取組を白星で終え、東京都墨田区の東関部屋に戻ると師匠の東関親方(元前頭潮丸)に思いを伝えた。しかしその後、先代の師匠、元関脇高見山の渡辺大五郎さん(68)の前では万感込み上げたのか言葉が出ない。15分、20分…。「まだ相撲取りたいのかと思った」と渡辺さん。やっと口を開いて「私、引退したいと思います」と高見盛。その言葉を聞いて渡辺さんは「ホッとした。プライドを持ってよく頑張った。もういいじゃないか」と優しく声を掛け、3人で固く握手した。
やはりこの男に涙は似合わなかった。その2時間後の引退会見ではピンと背筋を伸ばし、胸を張って2人の師匠とともに壇上に立った。
「今(引退を)決めたばかりでうまく思いを伝えられませんが、少しホッとした気持ちと少し先行きが不安なのが半々。悩みましたが、自分が力士でいられるボーダーラインを切ってしまったからには仕方ない」
5月に37歳を迎える大ベテランは満身創痍(そうい)だった。古傷の両膝痛が悪化した上、2日目の鏡桜戦で右肩を痛めた。「自分の体と相談してやってきたが右肩、両足、そして腰も首も。星勘定もそうだが、体がボロボロになっていく。さらに傷つけていくのではないか。その不安が大きかった」
神妙な雰囲気の会見が一転、大爆笑に包まれたのは渡辺さんの「次は早く嫁さんをもらえ!」のひと言だった。現役中は「相撲を取ることで精いっぱい。女性と付き合うなんて無理」とはねつけてきたが「今まで相撲にかけてきた時間をそっちにも使っていこうかな。まあ、ゆっくり、ゆっくりやっていきます」と嫁取り宣言をした。
すでに年寄名跡は取得済み。今後は年寄「振分」を襲名し、後進の指導にあたる。その第1弾として日本中から愛された角界のロボコップは西十両筆頭の大喜鵬(23)=宮城野=に対し「体ががっちりしているし、相撲もしっかりしている。彼、鍛えればもっと強くなりますよ」と自らの後継者として指名した。 (竹尾和久)
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