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地中熱で融雪 じんわり普及 弘前大と地元企業群が共同開発

地中熱の力で融雪した弘前大構内=18日、弘前市文京町

 自然エネルギーの一つの地中熱を融雪に生かす取り組みが、青森県内で進んでいる。灯油を使う融雪に比べ、燃料代や二酸化炭素の排出を抑える効果がある。弘前大と地元企業が共同開発した新技術も浸透。環境に優しいエネルギーとして注目を集める。

 18日、青森県弘前市の弘前大構内。朝から雪が降り続く中、新しい融雪設備のある一画は地面が出ていた。大学関連のベンチャー企業「弘星テクノ」(弘前市)の小川清四郎社長(62)は「今日のような大雪でも結構、溶けているでしょ」と自信ありげに説明した。
 新設備は同大の南条宏肇学長特別補佐(再生可能エネルギー)と地元企業群が5年がかりで共同開発。弘星テクノが2010年12月に販売を始めた。
 直径15〜20センチ、長さ10メートルの鋼管をくいのように地中に打ち込む。鋼管内の不凍液が地中の熱で温まる。それを地面の下に張り巡らせたパイプを通して電動ポンプで循環させる。一冬の維持費は駐車場1台分(約10平方メートル)で循環ポンプの電気代3620円で済む。灯油による融雪の5分の1だ。
 以前は設備を埋めるのにボーリングの必要があり、初期費用は駐車場1台分で180万円程度と高額だった。新技術では、鋼管をパワーショベルで地中にねじ込むことで、半額以下の80万円に抑えた。
 毎年大雪に見舞われる青森県では、個人宅の駐車場でもロードヒーティングの設置が珍しくなく、灯油の大量消費が長年の懸案だった。県は未活用に近かった地中熱に着目し、利用推進ビジョンを08年2月に策定、普及を後押ししてきた。
 新技術の融雪設備は販売開始後、約2年間で青森、弘前、むつ各市の住宅と公共施設で11件施工した。現在、4〜6件の受注を見込む。昨年の豪雪を機に、見積もり依頼は100件以上を数えるという。今秋には、地中熱をビニールハウスの冷暖房に使う「植物スマートハウスシステム」も販売される予定だ。
 小川社長は「地中熱はさまざまな活用が期待できる。産学連携を強化し、地域の役に立つ事業を展開していきたい」と意欲を語る。

[地中熱] 地中の浅い部分にある熱エネルギー。深さ10メートル以上になると温度が一定し、青森県内では年間を通して約13度に保たれる。夏は地上より冷たく、冬は温かくなる特性を生かし、住宅の冷暖房や給湯に導入する例も。地中深部にある「地熱」とは区別される。


2013年01月28日月曜日


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