世界の中の日本

沖縄(琉球)が独立する日-国際的に正当性を訴える

龍谷大・松島泰勝教授にきく(上)

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松島 最初に、友知政樹さんという沖縄国際大学の准教授が学会を提案し、これに賛同した、主に復帰後に生まれた人が中心となって準備が進みました。この中には、学者もいれば学生もいるし編集者や農家、新聞記者、ビジネスマン、主婦、NPOなどメンバーはいろいろです。学者だけが議論をするのではなく、学問的なスタイルを取って一般の人も参加して議論することになっています。

 琉球人の中には、独立を前提とした意見だけでなく、独立に関心があり、議論をしていく中で考えようという意見や、独立には反対だが現状はおかしいという認識に立ち議論に参加したいなど、いろいろな意見があります。これらすべてに門戸を開いて、議論し切磋琢磨して、「独立阻止」を主張する人とも平和的に議論していきたい。

神聖な場所での米軍の実弾演習

――グアムについて言えば、沖縄の海兵隊をグアムに移転させることにもなっていますが、グアムもまた基地反対、独立の動きがあるのですね。

松島 私も2年間グアムの日本総領事館で働いていたので分かりますが、琉球以上に植民地だなと感じました。島の3分の1が米軍基地。グアムでは軍用地主に地代も払われていない。また、アメリカ大統領を選べないし、グアムからの議員は発言権はあっても投票権はない。連邦政府、連邦議会がグアムに対する決定権を持っています。

 また、現地の観光業は日本資本が牛耳っている。グアムはもともとチャモロ人のものですが、マゼランが来て16世紀以降はスペインに支配され、1898年以降はアメリカ、戦時中は日本、そしてまた戦後はアメリカに統治されます。1950年になってようやく市民権が与えられました。にもかかわらず米議会や政府がグアムの事情を決めてしまいます。アメリカ本土のようには扱わないということを身をもって感じました。

 グアムで勤務したのち私はパラオで1年間働きました。パラオは独立して大きな権限を持っています。見た目はグアムの方が発展しているように見られますがグアムは内実は植民地です。であれば琉球からの海兵隊のグアム移転はおかしい。

 最近では特にパガットという村で建設されようとした米軍の実弾演習場が問題になりました。チャモロの遺跡もある古代の村であり精神的にも神聖なところで、実弾を海に向けて発射するという計画です。

 住民は激しく反対し裁判に訴え、この案は棚上げになりましたが、軍に対する強い反発が生まれています。また、空軍と陸海軍がある上に海兵隊がやってくることで、レイプなどの琉球で起きたような事件が女性の間で心配されています。

「これが復帰40年後の現実か!」

――ここ数年の沖縄の米軍基地をめぐる政府や日本の対応への不信と不満が、いままでのように、政府の言いなりにならないという気持ちを高めたのでしょうか。

松島 2012年11月に宮古島で開かれた九州市長会で、ある市長が沖縄県へのオスプレイ配備撤去の決議を出すことに反対しました。自分のところに来るかもしれないことに反対してのことです。こうしたことで、琉球人はますます自分たちが差別されていることを感じています。

 オスプレイの配備については、県議会、市町村議会の反対決議があっても押しつけられた。また、レイプ事件などが発生しても日米地位協定を変えようとはしない。これが復帰40年の現実なんですね。われわれが求めていた復帰とはこんなものだったのかと、かつて復帰を推進してきた人もいま言っています。

 本土復帰に尽力し、復帰後に最初の知事を務めた屋良朝苗さんという有名な政治家がいますが、彼の秘書的存在だった石川元平さんも最近地元紙の論壇で、独立をすべきだと言っています。元教員で復帰論者だったんですが、いまは独立を主張しています。

 当時は、日本国憲法は平和を掲げているし、基地もなくなり事件事故も少なくなるだろうと思っていたんですが、実際はそうならなかった。

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