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【第35回】 2013年1月28日
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石島照代 [ジャーナリスト]

昔楽しんだゲームの最新作を、親になっても安心して
子どもに与えてもらえる、そんなビジネスがしたい
――岩田 聡・任天堂社長インタビュー

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社会からの信頼と好業績は両立できる
ゲーム専用機悲観論の払拭を目指して

――経営者として、利益と企業のサステナビリティ(維持可能性)の両方を追求する?

 私はね、自分が子どものときに遊んで面白かったゲームの最新作を、親になったときに安心して子どもにやらせてもらえるようなビジネスがしたいんですよ。例えばマリオで育った世代の方が親になり、お子さんと一緒にマリオを遊んでくれるというようなことですね。それは任天堂が社会に信頼してもらっていることの証明ですから、そういうビジネスをしたいんです。

 5年後、10年後、20年後も我々のビジネスが健全に維持できているのか。お客様が満足し続けているのか。一時的に上手くいっても、いずれどこかで後悔するかもしれないのか。様々な仮説を検討する中で、どの方法が任天堂の価値を維持できるか。こういうことを考えると、目先の利益のためにそこへ行こうとはまったく思いません。中長期の利益で考えれば、むしろそうでなければならないと思います。ただし、私が言っていることが正しいか正しくないかを決めるのは、お客様です。もう少し長い目で見ていただくと、結果が見えてくると思います。

 任天堂社員も私の考え方に対して違和感を持っていないから、こうやって企業活動として成立しているんだと思います。だから、任天堂とはこういうことを考えている人たちの集団で、自分たちのしていることは長い目で見ればお客様に支持していただけると思ってやっているという、それだけのことです。

――空前のスマートフォンブームに加えゲーム専用機悲観論など、昨年はアゲンストな風がだいぶ吹いたように思います。

 昨年に限らず企業経営は局面ごとに常に大変なものですし、一方で自分を奮い立たせてくれる何かはいつもあります。例えば自分がニンテンドーダイレクトでお届けしたことに、ワクワクされている反応を見ることは、ものすごく自分にとってのエネルギーになっています。いつも、ありがとうございます。

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石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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