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コンテンツ業界キャッチアップ
【第35回】 2013年1月28日
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石島照代 [ジャーナリスト]

昔楽しんだゲームの最新作を、親になっても安心して
子どもに与えてもらえる、そんなビジネスがしたい
――岩田 聡・任天堂社長インタビュー

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 確かに、デジタルコンテンツはモノの形として見えないので、例えば大根の値段のように「だいたいこのくらいの値段」と、世の中の人が認めている相場に相当するものがないことは事実でしょう。ソフトもコピーすればタダで遊べると、マジコン問題(※)が生じたことも同じです。それではなぜ、任天堂の「マリオ」が4800円とか5800円でお客様に認めていただけるかというと、それは過去二十数年間積み上げてきた信用のうえで成り立っていると思います。

 あらゆるソフトウェアは、デジタル化とともにデフレの圧力に晒されてきたわけで、気をつけないと価値がすぐに下がってしまう。しかも、デジタルになると製造には直接の原価がかからないので、値引き競争になりやすい。しかし、良質なソフトの開発には大きな投資が必要で、値引き競争が行き過ぎると、コンテンツを作った人がみんなうまくビジネスできない未来が待っている。その結果、少数の大ヒット作以外は楽しめない、選択肢が狭まる未来になってしまうかもしれません。私はそうならない未来をつくりたいと思ってやっています。

(※)マジコン問題:ゲームソフトのコピーデータをゲーム機で起動させる機械(DS用の「マジコン」など)を使い、正規商品を購入せず複製されたゲームソフトデータを利用して遊ぶユーザーが増加した問題。損害金額は6年間で9450億円(2010年、CESA調査)。2011年12月施行の改正不正競争防止法で、マジコンの譲渡・販売に刑事罰適用。また、それに先立つ2010年1月施行の改正著作権法で、違法アップロードデータと知りながらダウンロードする行為は法人・個人問わず違法となっている。

――コンプガチャ騒動は、急成長したいわゆるソーシャルゲームビジネスの歪みを露呈するデジタル決済そのものにネガティブイメージをつけたようにも思います。たとえば、ゲームが下手な私なら、遊んだだけ払いたい。その一方で、フルパッケージで遊んだ方が「もっと遊びたい」と考えて、追加ステージをダウンロードコンテンツで買う機会があってもいい。ネットワーク時代の今なら、プレイヤーの能力差や楽しみ方の違いによって、支払い方が多様になってもいいのではありませんか? 

 かつてはパッケージとして最初にまとまったお金を払っていただき、あとはいくら遊んでも変わらないというスタイルだけが選択肢でしたが、今はゲーム機がネットワークに繋がったわけですから、遊んだ分だけ払うようなゲームがあってもいいとは思います。例えばお客様が「このゲームの価値は十分にわかっているから最初からフルプライス。その代わり追加料金はナシ」という遊び方もあれば、「これ面白そうだけど、やってみないと自分に合うかわからない」というものに関して、違うビジネスがあってもいいとは考えています。どういうご提案が適しているかは、ゲームの種類によると思っています。

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石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

 


コンテンツ業界キャッチアップ

ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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