- [PR]
政治
【主張】規制委の人事 国会の意見聴取が必要だ
このまま安直に決めてしまってよいのだろうか。原子力規制委員会の人事のことである。
28日からの通常国会で衆参両院に対して国会同意が諮られようとしているが、国の生命線であるエネルギー政策の根幹にも関わる極めて重要な人事案件だ。
最終的な国会同意に当たっては、事前に田中俊一委員長と4人の委員の全員から原子力安全と国のエネルギーに対する考え方を、国会の場で表明してもらうべきだろう。
規制委の人事は昨年9月、民主党政権下で同党内の意見がまとまらないまま、当時の野田佳彦首相の職務権限で任命されたにすぎない。いわば仮免許の位置付けなので、国会の事後承認が必要とされているのだ。
前政権下で、しかも変則的な形で任命された人事である。このまま素通りさせるとすれば、国民に対する責任を期待通りに果たしているとはいえまい。
現在の規制委については、すでにいくつかの問題点も顕在化している。まず第1に電力の専門家がいない。万一、原発の過酷事故が再発した場合、適切な判断が下せるのだろうか。
現在、原子力発電所の敷地内で進められている活断層調査についても釈然としない部分がある。
島崎邦彦委員長代理とともに現地調査に参加している研究者の人選に専門分野の偏りはないのだろうか。また、先の衆院選の最中に、日本原子力発電・敦賀発電所の破砕帯を活断層であると速断するなど、政治からの中立性を疑わせた行動も記憶に新しい。
さらには、放射性物質の拡散予測マップ作りでも初歩的な誤りを繰り返している。
原子力規制委は、高い独立性と権限を法律で保障された組織である。国会同意という最終的なお墨付きを、いったん与えてしまうと、民意や政治の意思による制御が難しくなる。慎重な手続きと見極めが不可欠だ。
原子力規制委の任務は、専門的知見に基づき原子力利用の安全性を確保することである。原発を廃炉にしたり、再稼働へのハードルを高くしたりすることが役目ではないはずだ。
その再確認のためにも、全員の所見と自覚を聞いておきたい。設置目的に反し、国の安全保障を脅かす規制委であっては困る。
- [PR]
- [PR]