財政の崖:回避へ法案 米上院が合意

毎日新聞 2012年12月29日 21時18分(最終更新 12月30日 00時32分)

 【ワシントン平地修】オバマ米大統領は28日、年末に期限が迫った「財政の崖」の回避策を巡り、ホワイトハウスで与野党の幹部らと協議。米議会上院で30日までに、崖回避のための法案を超党派でまとめることで合意した。ただ、この法案が上院で可決されても、野党共和党が多数を占める下院での採決の行方は見通せず、米経済は崖転落の瀬戸際まで追い込まれている。

 オバマ大統領と与野党幹部4人が約1時間協議。民主党のリード上院院内総務と共和党のマコネル上院院内総務が、来年初めに大規模減税の期限切れと歳出の自動削減が重なる「財政の崖」回避に向け、合意案づくりを進めることを決めた。両党が合意に至らなければ、オバマ大統領は、中間層向け減税延長と200万人が対象となる失業保険の給付延長を盛り込んだ大統領案の採決を議会に求める方針だ。大統領は協議後、「建設的な議論だった。私は合意の達成に控えめながら楽観的だ」と演説し、崖回避の手応えを強調した。

 オバマ大統領が今回、まず上院に合意形成を求めたのは、下院に法案可決の圧力をかける狙いがある。オバマ大統領はこれまで、下院で多数を占める共和党のベイナー議長を中心に交渉してきたが、行き詰まっている。

 崖回避で最大の焦点となるのは、減税延長の対象をどの所得層で区切るか。富裕層向け増税を求める大統領側は当初、年収25万ドル(約2100万円)以下の世帯の延長を求めていたが、減税の全面延長を求める声が強い共和党に配慮し、40万ドル以下とする修正案を提示した。一方、ベイナー氏は、年収100万ドル(約8600万円)以下にする法案を自ら提案しながら、党内をまとめ切れずに採決を断念。大統領側は、さらなる妥協を迫られる可能性もある。

 オバマ大統領は「米国民は我慢の限界にきている」と両党の合意を強く迫った。共和党のマコネル氏も協議後、「日曜日(30日)までに提案をまとめたい」と、民主党との合意に全力を挙げる構えだ。下院は30日に審議を再開する予定で、ベイナー氏は「上院が先に法案を通せば、下院でも検討する」との姿勢を示すが、市場は崖転落への警戒感を強めており、28日の米市場は株価が急落した。

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