2013年1月15日(火)

“今だからこそ…” 日中関係冷え込む中 一足早く春節祭

井上
「日中関係の悪化で、去年の夏以来、全国各地で日中友好の行事の多くが中止になりました。
しかし、そんな今だからこそ民間交流の火を絶やしてはならないと、名古屋市で中国の旧正月を祝う行事・春節祭(しゅんせつさい)が開かれました。
困難の中で、祭りの開催にこぎ着けた人たちの思いです。」

日中関係冷え込む中 一足早く春節祭

本国・中国より一足早く開かれた旧正月を祝う春節祭。
日中関係が冷え込む中、名古屋市で例年と同じようにこの春節祭を開くことには、特別の意味がありました。

核心:〝今だからこそ…〟

特別の意味、それは「日中友好の始まりの地」という誇りです。
名古屋では42年前、世界卓球選手権が開かれました。
当時、国交がなかった日本と中国。
このときの選手同士の交流は、のちの国交回復につながったとされています。
「ピンポン外交」です。
今回も祭りの実現の裏には、日本に移り住んだ中国の人たちの熱意がありました。
その1人、祭りの実行委員長を務めた中国・河南省出身のニエさんです。

春節祭実行委員長 聶二中さん
「人間と人間としてのつきあい、それから今よく使う言葉、共生・共存。
平和的な共生・共存が大事かな。」



中国の雑技団の出身で20年前に来日したニエさん。
こういう時期だからこそ、民間人が心を通わせることが国と国との絆を深めると信じています。

春節祭実行委員長 聶二中さん
「我々一般の民間人は文化の交流が必要。
草の根からの交流が。
国とか別の話。」

しかし、祭りに参加する中国の人たちの気持ちがひとつになるのは、容易ではありませんでした。
尖閣問題の直後。
去年秋、祭りの実行委員会の会合を記録した文書です。

“このような厳しい状況の中で開催すべきか悩みどころだ。”

日中関係が悪化するなか、祭りを開けば、日本と中国双方から無用の反発を受けるのではないか。
そうなれば飲食業や観光業などで生計を立てている自分たちの生活に影響がでるのではないかという強い不安がありました。
何度も繰り返された激しい議論。
開催を見送るべきだという主張もありました。
それでもニエさんたちは祭りの実行を決意します。

これまで積み重ねてきた日本人との強い絆を大切にしたい。
それがニエさんたちの決断でした。
開催に向けて動き出した中国の人たち。
その思いに応えた企業や団体もありました。

「早く日中の国民感情の改善をすることが大事だと思う。」

春節祭実行委員長 聶二中さん
「やっぱり草の根からの交流で、今こそやらないといけない。」

春節祭最終日の昨日(14日)は雨。
それでも会場には中国・日本、多くの人が集まりました。
フィナーレで、ニエさんたちは、特別な企画を用意していました。
日本の歌「故郷(ふるさと)」です。


春節祭実行委員長 聶二中さん
「中国もふるさと、日本も第2のふるさと。
その歌を歌って中国のふるさとを想像しながら、日本のふるさとも考えながら、皆さん交流した方がいいかな。
雨は降ったが、交流の目的は達した。」

井上
「この2年余り、日中の政治的な対立が文化交流にまで広げられてしまうという事態がありましたが、ニエさんたちの活動を見ているとほっとするものがありますね。」

大越
「草の根の、人と人との交わりが、政治の対立を雪解けに向かわせるいちばん大きな力になると思います。
だからこそ、政治的な対立を人的な交流にまで波及させることは決してしてほしくありませんし、むしろ困難の中でも民間の交流を続ける人々の努力を、ぜひ後押ししていただきたいものです。」

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