インタビューで今後の抱負などについて語る名古屋のGK楢崎=名古屋市東区の「アンティカローマ」で(榎戸直紀撮影)
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名古屋グランパスのGK楢崎正剛(36)と、本紙Jリーグコメンテーター、米山篤志氏(36)との同級生対談の後編は、今季のグランパスと将来像について、本音トークを展開した。
代表離れ余裕が
米山「日本代表から離れて(2010年秋)しばらくたつけど、シーズンへの入り方は、変わってきた?」
楢崎「違うよ。代表にいるときは、この時期も必死やった。1月の下旬くらいにクラブより早く代表合宿が始まることが多くて、すぐに実戦的な練習が入る。だから、まじめに自主トレしてた。今は、ゆっくりというか、余裕があるかな」
米山「代表でずっとプレーしてて、1年のうち、ほっとできる時ってあるの」
楢崎「ヨネも代表やろ。俺たちマカオ遠征(2000年)の時、同室だったやん」
米山「オレは一瞬だったから。1年のサイクルは分からないんだよ」
楢崎「ほっとできる時はないよ。夏も休みはないから。10年くらいずっと。だから代表から離れて、新鮮だった。今は、そうでもなくて、オフも家庭の役割とかあって、代表でホテルの部屋にいたほうがゆっくりできるんちゃうかって(笑)」
米山「Jリーグでさえ重圧があるのに、代表で戦うって、批判が大きい時もあるし、本当にきついと思うよ。この大変さを分かってくれよって思わない?」
楢崎「それは仕方がない。オレだって、野球見ながら勝手なことを言ってるんだから。知ってほしいとも思わんし。背景は必要ない。ドラマチックなストーリーや、ドキュメンタリーみたいなのはね。俺たちは、どれだけサッカーを楽しんでもらえるか。それだけでしょ。テレビの前より、スタジアムに来て、いろいろ言ってほしいというのはあるけどね」
観客呼ぶ仕掛けを
米山「スタジアムに来れば、サッカーの面白さは伝わると思うんだけど、サッカー好き以外の人たちにも間口を広げていかないと、なかなか発展しない。仕掛けが必要だと思うけど、ナラは何かいいアイデアはないの」
楢崎「お客さんに何かお得感があれば、来てくれると思う。野球の広島(マツダスタジアム)はバーベキューイベントをやってるんでしょ。いろいろ考えてるなと思うよ。サッカーでそれやったら、焼いてるうちに全部終わっちゃうだろうけどね。観客がいっぱいだと、オレら選手はうれしいし、注目されるカードの時は、特に気になる」
米山「久しぶりに名古屋に来て良かったよ。こんなしゃれたレストランで、食事をしながら、しっとりサッカーの話をしてたのが懐かしい。他のクラブではなかなかないけど、これって名古屋スタイルかな」
俊哉スタイルだよ
楢崎「俊哉スタイルでしょ。ちょっと前までは藤田俊哉ペースで、今は4番(闘莉王)ペース。ああいうヤツがいると助かるよ。みんな集まるし、何かやるきっかけができるしね」
米山「今やグランパスはJリーグの主役を張る立場だから期待してるよ」
米山「そんなことないって。いい選手はたくさんいるし、勝つだけじゃなく、魅せて勝つクラブになってほしいし、相手が対策を練っても、ひねりつぶすような強さを見たい」
楢崎「去年は、そんな感じになりかけたけど、うまくいかんかった。魅せて勝つというのは理想だけど、そこまで余裕はない。まずは勝ち続けて、そういう方向にしていければね」
米山「10年にリーグ優勝して、今度は、続けることの難しさを感じてるのかな」
楢崎「難しいね。チームにはいつも刺激が必要なのは間違いない。もっと良くしようとしてやったことが悪いほうに出ることもあるし、やってみないと分からん。ただ自分たちのスタイルを貫くことが大事だね、やっぱり」
米山「難しいけど、そこがサッカーの奥深さだったり、楽しさでもあるよね」
楢崎「試合が始まれば楽しいことばっかりじゃないし、何でやと思うこともあるけど最終的にさ、勝っていけば、優勝した時みたいに笑い話にできる。そんなふうにしたいね」
人格表れる楢崎のプレーを見て!
コメンテーターズ 米山篤志
プロ19年目を迎える同級生。才能があり感覚も鋭い。そしてそれを磨き続けることを忘れない。一瞬輝くことなら誰にでもできる。でも、輝き続けることは本当に難しい。きっといつも前を見ているからできるのだと思います。積み上げた実績の上にあぐらをかいて偉そうにすることもない。だから人も付いていく。一緒にプレーしていた頃と変わらぬ姿を見ることができた。
少し変わったなと思ったのは、自分の経験は伝えなくちゃいけないなと思い始めていること。そりゃそうです! あなたほどの経験値はもはや財産です。サッカー界のみならず、いろいろな所で大いに語ってください。それがサッカーの価値を上げることにつながると思います。今回の対談ではほんの一部分でもお伝えできればいいと思っています。人格はプレーに表れるもの。そんなふうに、楢崎正剛のプレーを見て、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。 (元日本代表、グランパスDF米山篤志)
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