・中国は近年、北朝鮮政権への経済支援を急速に拡大し、エネルギーや食糧の支援だけでなく、鉱物資源、水産資源などの利用の経済活動でも大幅な共同参加を進めてきた。経済利益という面だけでも、中国が北朝鮮との一体化を図ることには利点が多い。
・中国政府の権威ある複数の専門家たちは、北朝鮮崩壊の際には、隣接国としての中国が北朝鮮側の国境沿い地域への人民解放軍配備を含めて軍事介入の権利を有すると言明してきた。
・その結果、中国が事実上、崩壊した北朝鮮に介入し、支配を広げ、事実上の朝貢国や植民地を新たに作り出すという可能性も否定できなくなった。それを可能にする北朝鮮の中国依存は、北朝鮮が核兵器開発に専念しすぎて経済の自立が苦しくなったことから深まった。
・中国は、韓国や米国が韓国主導の北朝鮮併合あるいは朝鮮半島統一を進めるとなれば、軍事力を使ってでもその動きを阻止する構えがあると言える。その危険は「北朝鮮崩壊」というシナリオの意味をこれまでとはまったく変えてしまった。
日本も有事研究を進めるべし
この報告は総括として「21世紀には朝鮮半島に新たな現代の中国への朝貢国が生まれる可能性がある」と不吉な予測を打ち出す一方、その予測がすでに「逆転不可能になったわけでもない」とも強調していた。
この予測を変え得る展望の1つは、まず、朝鮮半島が米韓両国主導の統一国家になっても、中国が自国にそれほどの戦略的な打撃はないという判断を下す場合、そしてもう1つは、北朝鮮指導部がいくつかの理由で現在の中国への依存度を大幅に減らす措置を取る場合、なのだという。
いずれにしても、日本に重大な余波を及ぼす様々な事態を想定している。
北朝鮮が崩壊したらどうなるのか。日本もそんな事態に備えての有事対応を考えておくべきだろう。日本の国家安全保障には欠かせない有事研究だと言えよう。この報告はそんな現実を痛感させるのだった。
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