鷹狩り
HUNTING with HAWKS

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鷹狩りは中央アジアの遊牧民がはじめたと
いわれている。
「日本書記」に鷹狩りについての記述があり、
日本へは4世紀ごろ伝わったようだ。
また「万葉集」に鷹狩りの歌があることから、
7〜8世紀には国内に広がっていたと思われる。
その後、貴族や武士の間に広まり、
公的行事に取り入れられるなど、
近世まで盛んに行われたが、
明治に入り次第に衰微していった。
一方、このような歴史とは別に、
東北の山の民の間で
生業として鷹狩りが行われてきた。
松原英俊は、
この流れをくむ最後の鷹匠(たかじょう)である。

東北に伝わるクマタカを操る狩りは、
冬の雪山が舞台となる。
木々が雪で覆われれば道がないところも歩けるし、
獲物は逃げ場を失うからだ。
獲物はおもにウサギだが、
最大級の猛禽であるクマタカは、
ときにはキツネやタヌキにも襲いかかり、
強靭な足と鋭い爪で獲物を窒息させる。

鷹の訓練は毎年秋が深まったころに始まる。
一緒に暮らしていても、毎年繰り返さねばならない。
まず暗闇のなかで腕にとまることを教え、
できるようになると1本のろうそくを立てて
飼い主を確認させ、
夜明けの薄明かりに慣らし、
昼の光の中へと連れ出していく。
やがて信頼が深まると
呼び声ひとつで腕にもどるように訓練し、
ようやく獲物に飛びかかることを覚えさせるのだ。

いま、東北で受け継がれてきた生業としての鷹狩りは
消え行こうとしている。
もはやウサギなどの獲物が
日々の糧となる時代ではないのかもしれない。
クマタカで実猟ができる鷹匠は、
松原英俊ひとりとなった。