ドクター月尾 地球の方程式」は、放送を終了しました。
多くの皆様にご視聴いただき、有難うございました。
出演:月尾嘉男(東京大学名誉教授)
黒木奈々
東大名誉教授、元総務省審議官、ITの伝道師そしてケープホナーと様々な経歴・肩書きを持つ知の巨人・月尾嘉男さんが、現代を賢く生きるための文明論をわかりやすく語ります。
ドクター月尾・地球の方程式
第169週「マスメディア広告万能時代の終えん」
(06/16〜20放送)
6月16日 「広告の影響力と効果」
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の、マス4媒体のほかインターネット、
フリーペーパーやフリーマガジンなど
広告といっても、たくさんの種類があります。
そのなかで一番高い広告といわれているのが、
アメリカンフットボール、NFLのスーパーボール中継といわれています。
30秒のコマーシャル料金が日本円で約3億円。
このスーパーボール中継から歴史的なコマーシャルが生まれています。
なかでも1984年アップル・コンピュータが出したMacintoshのコマーシャルは、
1日にしてアメリカ中にMacintoshを広めた、まさに伝説のコマーシャルです。
日本のコマーシャルが、海外でも話題になった例もたくさんあります。
有名なのは、猿がウォークマンを聴きながら瞑想するという
ソニーのテレビコマーシャルです。
1987年から放送されたもので、「音が進化した。人はどうですか?」
「どこまで行ったら、未来だろう」というキャッチコピーを表現するために猿を起用。
海外でも高い評価を得たそうです。
広告というのは、商品を売る手段だけではなく、
企業のイメージをアップさせるなど社会においてさまざまな役割を持っています。
6月17日 「企業のマーケティング戦略」
日本初の広告はというと、新聞広告では、1868年(慶応3年)にだされた
パンやバター、ビスケットの広告といわれています。
これは、横浜在住のイギリス人宣教師べーリーが創刊した
「万国新聞」に横浜元町の商人・中川屋嘉兵衛さんが出したものだそうです。
日本初のテレビコマーシャルは、
1953年(昭和28年)民放テレビ放送のスターとと共にはじまりました。
「精工舎の時計が7時をお知らせいたします」という精工舎の時報でした。
当時のテレビのコマーシャルというのは今のようにVTRを流すのではなく、
スタジオの横などで生放送がメインでした。
日本で発明されたモノで最近、アメリカにも進出した
私たちにとって身近な広告手段があります。
1970年富士銀行(現みずほ銀行)が口座開設の粗品として
20万個配布したところ話題となって、一気にポケットティシュは
日本中に広まりました。現在では、年間30億個生産され、
4年前からアメリカに進出しているそうです。
広告とは、私たちの生活に密接な関係があるのです。
6月18日 「スポーツ広告とブランド戦略」
オリンピックのスポンサーには、全世界でオリンピックの名前を使って
プロモーション活動が出来るワールドワイドパートナー12社と
開催地、中国国内の企業によるスポンサーの2種類があります。
北京オリンピックの場合、ワールドワイドパートナー12社からの協賛金は
約8億6600万ドルで国内企業の協賛金は10億ドル以上といわれ
いずれも過去最高です。
また、ワールドカップのスポンサー契約も高額で知られています。
ワールドカップやオリンピックなど、公式スポンサーをみると
その時代がわかるともえます。
例えば、エミレーツ航空です。急速な成長を続けるドバイの航空会社です。
エミレーツ航空は、FIFAと公式スポンサー契約を結んでいます。
2006年にはF1のスポンサー、またイングランドのサッカーの名門、
アーセナルのスタジアムもネーミングライツによって
「エミレーツ・スタジアム」になっています。
昔はスポーツのスポンサーというのは、ただ広告を出すだけの存在でしたが
最近は、スポーツと自社のブランドイメージを
上手にコラボレーションさせています。
お金だけではなく、企業として何が出来るのかを示すことで
企業イメージをあげるというわけです。
6月19日 「広告の役割と可能性」
最近では広告の役割は多様化しています。
広告によって財政の支出を減らそうという自治体も増えています。
横浜市や大阪市をはじめ、全国の自治体で行っているのが
職員などへの給料明細書への広告です。
例えば、千葉県松戸市では市の職員4100人の給料明細書の費用
6ヶ月45万円を広告料金で賄っています。
スタジアムや公共施設に企業名を付けるネーミングライツです。
発想の勝利ともいえますが、これまで全く価値のなかった施設の名前に
「命名権」いう権利を持たせ企業に売るというビジネスで
90年代から伸びてきました。
また広告を使って、無料でサービスが受けられるモノも増えてきています。
これは、大学でコピーが無料で行えるサービス「タダコピ」です。
コピー用紙の裏面が企業広告になっています。
この「タダコピ」は東京大学をはじめ全国30以上の大学に設置されています。
他にも、写真に企業広告が印刷されることでデジタルカメラのプリントが
無料になるサービスや簡単なアンケートに答えると化粧品などの
試供品がもらえるサンプルショップがあります。
このような、広告を使ったアイデアで無駄な出費が減らせるのなら
試してみるのも良いかもしれませんね。
6月20日 「成長を続けるインターネット広告」
2004年以降、ブロードバンドの普及によりインターネット利用者が拡大し
それにより、さまざまなインターネット広告が誕生しました。
その勢いは、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌といった、マス4媒体の
広告シェアを脅かすものとなっています。
インターネット広告はこれまでの大量生産・大量消費の
社会の流れも変えるといわれています。
しかし、個人が広告主となるインターネット広告ですから
心配なこともあります。
インターネット用語にCGM(Consumer Generated Media)という
言葉があります。
ウェブを拠点にした口コミ装置のことで、ブログや
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などがこれにあたります。
インターネットで情報が広がっていくようになるわけですが、
都合のいいものばかりではありません。
個人や企業を誹謗中傷する内容もあるのです。
これらは、個人の動きで規制できるものではありません。
ですから、私たちは情報が正しいかどうかを判断する能力を養っていく
必要があります。