第3回 何が「児童ポルノ」として禁止されるのか― AKB48河西智美さん写真集から考える、日本の「表現の自由」(2)
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◆ 子どもを守ることが目的――――「わいせつ物の規制」との違い
児童だけでなく成人のポルノ写真も、わいせつ物規制の対象になります。刑法175条が禁止する「わいせつな文書」を販売・陳列した罪は、最大で懲役2年・罰金250万円です。
わいせつ文書の規制は、社会の健全性(健全な風俗)の保護を目的としています。
規制によって「表現の自由」を過度に侵害しないために、処罰対象は「普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するもの」のみに限定されます(最高裁・チャタレー事件判決)。だから性器にモザイクがかかるのです。
これに対して児童ポルノ規制は、被写体となる児童の権利侵害防止を目的に含んでいますから、比較的強い表現規制が許容されます。モザイクをかけても処罰対象になります。
「表現の自由」があるからといって、児童への権利侵害を認める訳にはいかないのです。
◆「表現の自由」を守ることは大切―――いきすぎた規制は問題
性的表現については一定の自主規制も必要でしょう。
しかし、政府や行政機関による表現規制が強まりすぎることには警戒が必要だと思います。現代の社会は、市民による自由な言論や表現が基礎にあってこそ豊かに発展するからです。
北朝鮮や中国のように、自由な言論を封じ込める国家は健全さを失います。
日本でも、かつて「戦争反対」と言っただけで逮捕される時代がありました。その結果、悲惨な戦争へ突き進んでしまった反省を忘れてはいけません。
最近では、マンションにビラを配布した一般公務員が逮捕された後、最高裁判所で無罪とされた例もあります(最高裁・平成24年12月7日判決)。この件でも、警察による規制が行き過ぎではないかが問題とされました。
最近では、選挙活動のネット解禁なども話題になっています。言論や表現への規制は、つねにホットな話題です。
あって当たり前の「表現の自由」。それが守られ発展するために、1人1人の努力も問われていますね。
次回予告 2月1日(金) お楽しみに!!
大前治
弁護士(大阪京橋法律事務所)。大阪弁護士会所属。1970年生まれ。大阪大学法学部卒業後、鉄道会社に2年間勤務し、退職後に司法試験合格。市民が親しみやすくアクセスしやすい法律事務所を目指して、弁護士登録5年目に庶民の街・大阪市京橋に現事務所を開業。
「困っている人に寄りそう」をモットーに、市民が直面する紛争トラブル全般を手掛ける。東日本大震災に際して被災者支援のQ&Aをネット上で発信するなど、その真摯な姿勢に信頼の声も高い。「法律を適用するには、まず事実をリアルに捉えること」が座右の銘。
「発言する保護者ネットワークfrom大阪」などの市民運動にも取り組み、学校教育や保護者の役割などの提言を発表している。
・Twitter:大前治
次号は 2月1日(金)12時発行!
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