第3回 何が「児童ポルノ」として禁止されるのか― AKB48河西智美さん写真集から考える、日本の「表現の自由」(1)
欧米少年の手で”手ブラ”したことで波紋を呼んだ河西智美さんの初写真集。いったい何がどういけないの?
AKB48・河西智美さん(21歳)の写真集をめぐって、関係者が警察から事情聴取されました。男子児童が河西さんの胸を手で隠した写真が、「児童買春・ポルノ禁止法」に触れる疑いがあるとされたのです。
発行者は、「性器は写っていない。胸を隠しているから大丈夫」と考えていたかも知れません。それが落とし穴でした。逆に、男児の手で胸を隠したことが問題になったのです。
このニュースを見て、「裸で走る子の写真をブログに載せただけで犯罪になる?」と心配した人がいるかも知れません。そこで今回は、児童ポルノ問題について考えてみましょう。
◆ なぜ河西さんの写真集が「児童ポルノ」?
児童買春・児童ポルノ禁止法の第2条が禁止する「児童ポルノ」とは、①性交やその類似行為、②他人が児童の性器等を触る、又は児童が他人の性器等を触る行為、③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態、とされています。
これらを提供した者は最大で懲役3年又は罰金300万円の処罰を受けます。
ただし、②や③に該当しても、性欲を興奮刺激しないものは処罰対象になりません。ですから、プールで上半身裸の男児の姿をブログに載せても、通常は③には該当しません。
不思議なことに、河西さんの写真集は①~③に該当しないように思います。胸を触るだけでは「性交類似行為」とか「性器を触る」に該当しないからです。
ところが法律は、「性器等」には肛門と乳首を含めると定めています。したがって、児童が女性の乳首を触ることは、法律のうえでは「性器等を触る」に該当するのです。
この「等」の一文字が大きい意味をもつのです。
大前治
弁護士(大阪京橋法律事務所)。大阪弁護士会所属。1970年生まれ。大阪大学法学部卒業後、鉄道会社に2年間勤務し、退職後に司法試験合格。市民が親しみやすくアクセスしやすい法律事務所を目指して、弁護士登録5年目に庶民の街・大阪市京橋に現事務所を開業。
「困っている人に寄りそう」をモットーに、市民が直面する紛争トラブル全般を手掛ける。東日本大震災に際して被災者支援のQ&Aをネット上で発信するなど、その真摯な姿勢に信頼の声も高い。「法律を適用するには、まず事実をリアルに捉えること」が座右の銘。
「発言する保護者ネットワークfrom大阪」などの市民運動にも取り組み、学校教育や保護者の役割などの提言を発表している。
・Twitter:大前治
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