憂楽帳:カメラがいっぱい
毎日新聞 2013年01月24日 大阪夕刊
出勤の時。いつも使うエレベーターで、誰もいなかったらチャンス! 壁の鏡部分を使って、身だしなみチェックだ。つかの間だけど、気分はのびのび。こんなに“一人きり”を謳歌(おうか)できるのも、ここには防犯カメラがないからだ。
帰り道に、小学校の前を通る。夜、その校門前を通る度、ピカッとライトが光る。威嚇か。不審者じゃないって。いいかげん覚えてほしいなと見ると、カメラがにらんでいる。自宅マンションに着くと、入り口すぐの天井で半円球のカメラが黒く光って迎えてくれる。先日、郵便を取りに行ったら、よその家のフタがぱかーんと開いていた。閉めてあげようと近づいたが、やめた。天井のカメラが「なぜ他人のを触るのですか?」と聞いてきそうだから。
大阪・梅田の百貨店前を通る地下道数百メートルには26台が稼働して、ほぼ死角なし。大阪府警が来年度末までにキタやミナミなどに増設する約100台は、50メートル先の人の顔も判別できるとか。
カメラは、安心できる生活をつくっているはず。でも、ない方がなんだかホッとする。【三角真理】