いいママになりたかった:大阪2児放置死事件/下 出し続けたSOS 「寄り添い」なく、孤立深め

毎日新聞 2013年01月24日 東京朝刊

 被告はそう語った。ただ、児相側は被告からの電話について「記録がない」としている。この頃、区役所も本人に3回電話し、連絡を取ろうとしたが、被告は携帯電話に出なかった。

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 中村被告は、徐々に現実から目を背けていく。翌10年1月、子供の水遊びで部屋が水浸しになったトラブルを機に、大阪市へ転居。それから5カ月後の6月9日、被告は子供を置いてマンションを出た。クラブで友人と夜通し遊んだり、男性とホテルに泊まったり。50日間、家に帰らなかった。

 当時の心境について、被告は法廷でこう語った。

 「子供のことは考えないようにした」

 虐待する親を多く支援してきた愛知県弁護士会の多田元(はじめ)弁護士は「育児放棄する親は、人とつながる力が弱く、少し困難にぶつかると無力に陥る。こうした親が『預かって』と言うのはよほどのこと。役所は『預かるから来てほしい』と応じるなど、機会を逃してはならなかった」と話す。

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 事件に衝撃を受けた大阪では、母親を孤立させないよう支援する動きが出始めた。

 「いつでも連絡ちょうだい」

 昨年11月、大阪市内であった母親対象のランチ会。主催した木村直美(まさみ)さん(33)=大阪府門真市=が、子連れで参加したシングルマザー(30)に語りかけた。

 木村さんは2歳から6歳の4人の子を持つ母親で、水商売の経験もある。事件を受け、11年4月にひとり親を支援する活動を始めた。自身のブログ(http://ameblo.jp/mds-plehc/)でメールアドレスを公開し、400人以上の母親の相談に乗ってきた。

 「泣いてる子を放ったらかしてしまった」と心配する親を「大丈夫」と安心させる。「休みの日の子供との過ごし方が分からない」という親は、親子とも自宅に招き、一緒に遊ぶ。木村さんは「子供を救うには、まず母親に寄り添うことが大事」と訴えている。

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 中村被告は記者にあてた手紙の中で、返信を書いた理由をこう記していた。

 この事件は私の責任です。でも、子育てを独りでしている人もたくさんいます。(そうした)人から手紙を何通かもらいました。「私もいつ貴方(あなた)のようになってもおかしくなかった」と書いてくれていました。

 事件のことを書いて下さることで、今も悩んだりしてる方が若(も)しかしたらSOSを出さなきゃと思うかもしれない。そんな人の相談にのってあげたいと思う(人が現れる)かもしれない。そう思うと、ぜひお願いしたいと思っていました。【反橋希美】

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 ◇母子支援制度、周知されず

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