首都圏ネットワーク

12月13日放送
暮らしなっとく 冬の脱水予防

生活情報部 松岡 康子 写真
生活情報部
松岡 康子

空気が乾燥しているこの時期、実は脱水にも注意が必要なんです。
夏のように汗を大量にかくわけではないのですが、冬は空気が乾燥していますので、皮膚や話している息から、気付かないうちに体の水分が失われています。
寒いと水分をとる量も減りますから、意外と脱水になりやすいのです。

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冬に、どれだけ水分が失われるのか、口の中の水分を測ることができる装置で、街行く人たちを調べてみました。
27を下回ると、脱水の疑いがありますが、この女性は20.2。「冬になると水は寒いから別にいいやと思って」とちょっと驚いた様子でした。

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医師で、体の水分管理に詳しい神奈川県立保健福祉大学の谷口英喜教授は、脱水になると、感染症などのリスクが高まると指摘しています。
谷口教授は「脱水になると体液が減って口の粘液が少なくなって、防御機能が落ちてウイルスが侵入しやすくなる。もう一つは、体の水分が減って血液がドロドロになる。このため、脳梗塞、心筋梗塞を起こす大きな要因になっている」と言います。

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脱水を防ぐために欠かせない、水分補給。
しかし、飲み方によっては逆効果になることもあります。
谷口教授の研究グループは、3時間飲食せず脱水気味の学生に、コーヒーや水、オレンジジュースなどを500ml飲んでもらい、血管の変化を調べました。
水分補給の効果が出れば、血液量が増えて血管が太くなります。

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コーヒーを飲んだ学生の場合、10分後には飲む前より血管が15%太くなりましたが、30分後には逆に、飲む前より血管が10%細くなることが分かりました。
コーヒーに含まれるカフェインには利尿作用があるため、水分が奪われてしまったのです。
かえって脱水になりやすいため、谷口教授は、空腹時やのどが渇いている時にカフェインを含む飲み物を飲む場合は、注意が必要だと言います。

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「カフェインを飲んでいけないということではなくて、これはアルコールも同じなんですが、お腹がすいているときは、吸収能力が上がるんですね。食事のついでにお茶やコーヒーを飲む、あるいは食後に飲むことが必要」。

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水分は飲み物だけでなく、食事からの補給も重要です。
女子栄養大学助教の浅尾貴子さんは、温かい汁物による水分補給を勧める一方で、気を付けるべきことがあると言います。
「汁物をたくさん取ると塩分の取りすぎになってしまうので、塩気を控えながら料理に水分を使うというのが、脱水を防ぐコツの1つですね」。

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浅尾さんは、食事から水分をとりつつ、塩分を控えるためには、野菜を多く取り入れるのがポイントとアドバイスしてくれました。
野菜には、カリウムが多く含まれ、塩分を体の外に出す働きがあるからです。
また、トマトやキノコなどうまみ成分の多い食材を使ったり、ドライハーブを使うと、塩分を減らしても、おいしく食べられます。

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こちらが冬野菜を使った、減塩のトマトスープ。
見た目もおいしそうです。
これで、ふだんの食事から十分に水分補給ができます。

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さらに、脱水を防ぐためのもう一つの方法が運動です。
運動で汗をかいたら水分が失われそうですが、実は有効な予防法なんです。
高齢者の健康づくりに携わっている、信州大学大学院スポーツ医科学講座の能勢博教授は、脱水を防ぐために、冬こそ運動が重要だと呼びかけています。
なぜなのでしょうか。

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1日30分のややきつい運動を5日間、成人男性に続けてもらったところ、平均で3%血液量が増えたのです。
その理由は、腎臓などから出るホルモンです。

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能勢教授は「運動するとたくさん水を体に蓄えなくてはということでホルモンが出る。その結果、腎臓の蛇口がちょっと閉まって、同じ量の水を飲んでいてもたくさん水をためようという反応が起きる。その結果、からだがみずみずしくなる」と言います。

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能勢教授は、高齢者でもできる運動として、「インターバル速歩」を勧めています。
やり方はとても簡単です。
ゆっくりとした歩きと早歩きを3分ごとに繰り返すだけです。
これを1日30分、週4日ほど行うのが目安です。

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特に高齢者は、運動後30分以内に、牛乳やヨーグルトなどのタンパク質をとると、血液量をより効果的に増やせるといいます。

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さらに冬に最も注意が必要なのは、感染症による脱水です。
中でも小さな子どもは、下痢やおう吐で、重症の脱水症になる危険性があります。
済生会横浜市東部病院小児科の十河剛医師が勧めているのは、
経口補水液と呼ばれる飲み物です。
経口補水液は、下痢やおう吐で失われるナトリウムなどの電解質を多く含んでいます。
十河医師は、「吐いたり下痢したときに、これは点滴と同じくらいの効果があると言われています」と説明してくれました。

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また、足りなくなった水分を十分に補うため、飲む量も大切です。
脱水の時は、体重1キロ当たり50mlから100mlを3、4時間の間に飲ませます。
十河医師は「子どもは水分の代謝がものすごく速いので、吐いたら飲ませるなということだと、赤ちゃんだと数時間で脱水になってしまいます。吐いても吐いても少しずつ飲ませていくことが、脱水にならないコツだと思います」と話してくれました。

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取材に当たった生活情報部の松岡康子記者は「冬はのどが渇きにくく、水分をとるのを忘れてしまいがちなので、食事以外に、食事と食事の間や、寝る前など、1日に8回くらい、意識的に水分を補給することも大切です。また、ふだんは経口補水液を使う必要はありません。しかし、経口補水液は、下痢やおう吐などで水分だけでなくナトリウムなどの電解質が多く失われている時に使う飲み物です。ただ、泣いても涙が出ないとか、口の中が乾いている時などは、早めに受診してほしいということです」と話しています。

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