Vol.024
高校駅伝男子の部・14年連続全国大会出場へ牽引 豊川工業高校陸上部顧問・監督・渡邉正昭さん
- スポーツ部門
私立高校とくらべ、様々な制約のある公立高校。
スポーツ選手のスカウトや育成でも、差が出てくるのが当たり前の環境だ。
高校駅伝の世界でも然りであろう。
そんな中、14年連続で、高校駅伝・男子の部の、全国大会に出場し続けている公立高校がある。
愛知県立豊川工業高校だ。
決してエリートではない部員たちを、タスキを繋げて走りぬかせ、全国大会出場へ引っ張ってきたのが、豊川工業高校陸上部顧問で、監督の渡邉正昭教諭だ。
渡邉監督は今年で就任20年目になるが、就任当時、校庭は雑草で覆れ、部員も惰性で過ごしていたそうだ。
まさにゼロから生まれた陸上部を、ここまで牽引してきた渡邉監督にお話を伺ってきた。
結果を出し続けていることについてお伺いします
- 14年連続で全国大会に出場できたのは、まあ毎年の繰り返しで、ある意味たまたま毎年毎年そういう形でいただけているということだと思っています。
僕が揺るがぬ信念で指導しているベースの部分というのは、
「しっかりした高校生になろう」
ということなんです。
部活動だけではなく、日常生活の中で、
「自分のことは自分でやる」
「自分がたてた目標は必ずやり抜く」
こういうことを、徹底して守らせています。
「自分が決めたことは、責任持ってきちんとやり抜く」
これをちゃんと続けさせることが大事なんですけど、それは普段の生活の中で充分出来ることを目標にさせてて、その目標がクリアできるまでは、とにかくきちんとやり抜かせます。
で、これが達成できると、今度は次の目標に向けて頑張らせる。
いきなり高いハードルの目標を上げても無理ですからね。
普段の生活で出来るのに出来ていないことから始める。
で、コツコツと継続させて、それが成功したら、その次に向けてステップアップさせていくわけです。
コツコツと続けること、この繰り返しです。
でもこれが全てですね。
部員さんたち、個性も性格も色々だと思いますが、チームワークを作るのは大変ですか?
- 高校駅伝、男子の場合は42.195㌔を7人で、女子の場合は21.0975㌔を5人で走るんですが、この、男子7人、女子5人だけがメンバーではないってことを全員に意識させています。
部員全員に役割分担をするんですが、各自がその役割をきちんと果たすことが大事ですね。
これは全員がきっちりと意識しないとダメなんですよ。
だから、誰か一人が役割を果たさない場合、全員が困ってしまうという状況を作ります。
その積み重ねの中で、だんだんチームがひとつにまとまってくるんです。
部員一人一人、個性も性格も違いますが、それぞれが皆(チーム)のために自分の役割(ワーク)をきちんと果たすこと。
こうやってチームワークを作っていきます。
現代っ子たちを指導しながら、今の子は難しいな~って感じることはありますか?
- チームワークとの関わりになる話なんですが、実は今の子たちは、チームワークの前提になる、グルーピングっていうのが出来ないんですよね。
指導してても感じるんですが、
「仲間で協力するぞ?いいか?」っていうのが解らないんです。
仲間同士の競争っていうか、ライバル意識も低いですね。
「あの子はあの子なりにああやってますけど、僕は僕なりに頑張ってますから」
とか
「僕的には~、私的には~」
っていうのかなあ(笑)。
生活そのものが頑張らなくても困らないようになってるじゃないですか、今は。
非常に便利な時代になってしまいましたから。
だから、自分の中だけで、成長できてしまうようになってきてる。
その分、器が小さい人間になっていってしまってて、結局グルーピングが出来ないんですよ。
なかなか手ごわい現代っ子ですね。では、どうやってグルーピングを教えていますか?
- グルーピングがきちんと出来るようになるための手段として、僕は「連帯責任」っていう方法を取っています。
例えば、伝達事項が誰か一人のせいで滞ってしまった場合でも、それは「連帯責任」。
もう部員全員腕立てとかさせてます。
部員、文句言わんとやってますけどね。
でも、そのうち、部員達がだんだん変わってくるんですよ。
で、お互いに「大丈夫か?」「ちゃんとやったか?」って、確認しあうようになってくるんです。
そして、だんだん信頼関係も出てくるわけです。
これが、グルーピング出来てないときだと、平気で「僕知りませ~ん」とか言ってたのに(笑)。
こうやって、全員がきちんと協力し合えるようになり、その協力によって成し遂げることで、グルーピングがきちんと出来てくるんですよ。
そして、グルーピングが出来ると、今度は個人と個人の間でも、「あいつ頑張ってるから、僕も頑張ろう」っていう意識が芽生えてきます。
監督の僕が出す部員への刺激ってごく少しなんですよね。
子ども同士の中でのお互いの成長や刺激が一番影響力があります。
今の子達は、なかなか自分が仕切ることをしないんですよ。
でも、グルーピングをして、誰か一人欠けても、ダメなんだぞっていうことに、少し重い負荷をかけてやると、本気の言葉が出てくるんですよ、部員から。
そして本気で協力しあって結果を出せる。
結果を出せたら「みんなで出来た!」っていう達成感を感じてくれるわけです。
実際に走る選手ですが、決めるのは監督ですか?
- うちの陸上部では、部員全員で話し合って決めています。
それこそ「大事なタスキ」を「託す(預ける)」メンバーですからね、実力だけでは選ばないんですよ、部員は。
で、大事になってくるのが、「当たり前のことがきちんと出来ているか」ということ。
つまり、ちゃんと信頼できるかどうかってことも大事なんです。
駅伝というのは、任された区間、たった一人で走るわけですから、その区間の全てが、選ばれた選手にかかってくるし、レース全体に影響しますから。
だから、信頼できるやつに「よし、次任せたぞっ」ってタスキを渡すということです。
「あいつ大丈夫だろうか、、、?」ってわけに行きませんので。
そういうのは部員はシビアですからね、徹底的に話し合って決めています。
今後の目標については?
- まず、チームとしては、愛知県大会で優勝して、全国大会へ出ることです。
とにかく毎年毎年のことなので、昨年は全国大会で6位だったんですが、前の結果は一旦リセットします。
前の年の結果が良かった時ほど徹底的にリセットしますね。
昨年全国6位で、結果が良かったので、今年はリセットさせるのが難しいんですよ。
ミスを見逃しやすいので。
なので、ミーティングをしっかりやって、きちんと声を出したりして、又ひとつひとつを積み重ねて、去年よりいい結果が出せればいいと思っています。