森口尚史
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人物
奈良県出身[1]。東京医科歯科大学で看護学を学ぶとともに、修士号を取得した。
東京大学で学術博士号を取得し、東京大学特任教授などを経て、東京大学医学部附属病院特任研究員を務めた[3][4]。専門は知的財産法、医療技術評価[5]。
2012年(平成24年)10月、読売新聞により「ハーバード大学客員講師」の肩書きで「iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施した」と大々的に報じられたが、多方面から数々の疑義が提起され、その2日後に同新聞は「同氏の説明は虚偽」とし、それに基づいた一連の記事は誤報であったことを認めた。その後、一連の問題を受けて、東京大学医学部附属病院から懲戒解雇処分を受けた。しかし、森口は世界初のiPS心筋移植となる1例は事実であると主張した。自宅周辺の店員によると、「日本では発表できない研究をニューヨークで発表する」と豪語したり、自らをノーベル賞の候補と称したり、「ハーバード大学で研究している」、「研究仲間が気に入らない」などと話していたという[6][7]。
同年12月、芸能プロダクションとの契約およびタレントデビューが報道された[8]。
経歴
- 1989年(平成元年)4月 - 東京医科歯科大学医学部の保健衛生学科看護学専攻に入学する[9]
- 1993年(平成5年)3月 - 東京医科歯科大学医学部の保健衛生学科看護学専攻を卒業して、同年看護士(現在は看護師)の資格を取得する[10]
- 1995年(平成7年) - 東京医科歯科大学大学院の保健衛生学研究科総合保健看護学専攻の博士前期課程を修了して、修士号(保健)を[5]取得する[3][11]。修士論文の題目は「健康診断における異常所見の評価とその予後に関する考察〜超音波エコーによる胆のうポリープの自然経過の検討」[10]。
- 1995年(平成7年) ~ 1999年(平成11年) - 財団法人医療経済研究機構主任研究員・調査部長となり、ハーバード大学メディカルスクール・マサチューセッツ総合病院客員研究員となる[12]
- 1997年(平成9年) - 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科の非常勤講師となる(国際看護保健学、健康情報データベースと統計分析など担当)(2009年(平成21年)迄)[10][13]
- 1999年(平成11年)8月 - 東京大学先端科学技術研究センターの研究員となる(知的財産権大部門)(非常勤)[12][14]
- 1999年(平成11年)11月 ~ 2000年(平成12年)11月 - マサチューセッツ総合病院の消化器内科の客員研究員となる[12]
- 2000年(平成12年)10月 - 東京大学先端科学技術研究センターの客員助教授となる(常勤)[12][14]
- 2002年(平成14年)4月[3] - 東京大学先端科学技術研究センター特任助教授(次世代的知的財産戦略研究ユニット、先端医療システム研究)(常勤)[12][14]
- 2006年(平成18年) - 東京大学先端科学技術研究センターの特任教授となる(システム生物医学)(2009年3月迄)[14][15][16]
- 2007年(平成19年)9月 - 東京大学大学院より、博士号(学術)取得。博士論文題目は「ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化」[17]、主査は児玉龍彦東京大学先端科学技術研究センター教授[18]。
- 2010年(平成22年) - 東京医科歯科大学教授・薬品メーカーと共同でC型肝炎の予防および治療に有用な特許を発明者として提出し、2012年(平成24年)に特許を公開する。
- 2010年(平成22年) - 東京大学医学部附属病院の特任研究員となる[14]。助成金から人件費として月45万円以上が森口に支払われていた[19]。研究テーマは「過冷却(細胞)臓器凍結保存技術開発」。
- 2012年(平成24年)10月 - iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施したと発表。当初6例実施としていたがそのうち5例は希望で1例は実際に行ったと訂正[20]。19日、東京大学医学部附属病院から懲戒解雇処分を受ける[21]。
- 2012年(平成24年)11月 - イギリスのオンライン誌「サイエンティフィック・リポーツ」は9日に、森口による論文2本の掲載を撤回した。森口自身も内容の正確さが保証できないとして、撤回を希望していた[22]。
本人の主張した成果
iPS細胞を活用した創薬
2010年5月1日、読売新聞朝刊(大阪版)が「iPS活用 初の創薬」と報じた。記事では、森口と東京医科歯科大学がC型肝炎の治療法を発見したとしていた[23]。また、日経産業新聞も同年4月に独自に森口を直接取材し、6月2日にiPS細胞を活用したC型肝炎創薬について報じていた[24]。
しかし、2012年10月12日に、同大は記者会見の中で「このような実験及び研究が行われた事実はない」ということを明らかにした[23][24]。
iPS細胞手術
発表
2012年平成24年10月11日、読売新聞は、森口がiPS細胞を使った世界初の臨床応用として心筋移植手術を実施したことが10日分かった、と朝刊一面で大きく報じた[25]。それによればハーバード大学客員講師の森口が同年2月に虚血性心筋症の男性患者(34歳)に対し、男性の肝臓から取り出した細胞から独自の手法でiPS細胞を作成、心筋細胞に変化、増殖させた。この心筋細胞を心臓バイパス手術を受けた患者の心臓に注入した。約10日後から心筋機能は平常になり、報道時点では平常の生活を送っているというもの。この手術を行う際にハーバード大学倫理委員会から「暫定承認」を受けたという[26]。治癒対象の患者は6人で、前述の患者のほかに43歳の男性と35歳の女性にも手術を行ない、残りの3名についても年内中に移植手術を終える予定だとした[9]。読売新聞は夕刊一面でも、森口のインタビュー記事など続報を掲載した[27]。
森口は、現地時間で10月10日、11日にニューヨークで開かれる国際会議や、科学誌で手法を公表するとしていた[25]。
反応
この報道内容に対して、国内外の研究者から疑問の声が上がった[3]。日本時間10月11日深夜、マサチューセッツ総合病院は「森口氏は1999年(平成11年)~2000年(平成12年)まで病院に客員フェローとして在籍したが、その後は病院や(関連する)ハーバード大とは関係がない。大学や病院の内部審査委員会が治験を承認したとの事実はない」とする声明を発表した[28]。これを受けて国際学会を主催するニューヨーク幹細胞財団も「森口氏のポスターについて疑義が示された」とする声明を発表し、会場から発表内容を示したポスターを撤去した。森口は現地時間11日、ポスターの前で自らの研究成果を研究者たちに説明する機会が与えられていたが、時間を過ぎても姿を見せなかった[28]。しかし、ハーバード大学医学部は、その後2006年に森口に客員講師・コンサルタントの肩書きを授与し、2010年には森口と同大学の准教授を発明人とする特許を出願していた事実などが判明。当初のハーバード大学の声明には疑義が生じている。
10月12日、科学雑誌ネイチャーも森口の研究について疑義を述べた[29]。この中で中内啓光東大医科学研究所教授(幹細胞研究で著名[30])は、発表された内容に疑問があるとした上で、森口の手法での成功例は聞いたことが無いとしている[29]。
森口はインタビューで「きちんとした手続きにのっとって移植を実施した。私に医師の資格はないが、移植は医師の指示の下で行われたので問題はない。ハーバード大学が私が所属していないと否定するのはよく分からない」と語った[31]。
10月13日、この件を最初に報道した読売新聞は「同氏の説明は虚偽で、それに基づいた一連の記事は誤報」である旨のおわび記事を掲載した[32]。読売新聞の報道を後追いした形の共同通信社や日本テレビ放送網、産経新聞も誤報を認め、謝罪した[33][34][35][36]。
この一方、朝日新聞や毎日新聞、日本経済新聞は、森口に取材を行ったが信頼性が低いと判断し、記事化を見送っている[37][38]。
この日、森口は滞在先のニューヨーク市内のホテルで記者会見を開き「移植が実施されたのは1例のみで、残りの5例は間違いだった。つい勢いでウソをついてしまった」と述べ、従来の主張は大半が虚偽であったことを認めた。「1人の患者には、別の病院で、去年6月に本当に細胞移植を実施した」と強調し、世界で初めてiPS細胞のヒトへの応用を行ったという主張は変えなかったが、どこの病院で誰が手術を行ったのかについては「共同研究者から『言うな』と言われている」とだけ答え、具体的な証拠は一切示さなかった[20]。
研究費助成の受給等に関する調査
森口は、2010年度以降、iPS細胞関連の研究を行うとして、下記のとおり、内閣府の助成金や、経済産業省の委託事業の費用の一部を研究員費として得ていた。また、1998年度以降、厚生労働省や文部科学省が助成した研究にも関わっていた。しかしながら、iPS細胞手術の少なくとも一部が虚偽であったことから、各省庁などでは研究の実態の有無について調査を行っており、内閣府では実態がない場合には返還要請を検討するとしている[39]。また、専門家は詐欺罪や補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が適用される可能性を指摘している[39]。
- 内閣府
- 2010-2013年度に、臓器の凍結保存技術に関する研究に総額約1億6,380万円を助成。このうち、2011年3月-2012年9月に森口を東京大学特任研究員として雇用する経費として967万円が支出されている[40]。研究の代表者は、森口がハーバード大学で研究を行っていると思っていたと説明している。
- 千葉県産業振興センター
- 経済産業省からの委託を受けた事業で、東京大学を再委託先としているが、2010年9月-2011年3月に森口の研究員費として約230万円が支出されている。千葉県産業振興センターが実態の有無を調査中。
- 厚生労働省
- 1998-2006年度に、森口が関わった3件の研究に総額4,925万円を助成。主任研究者に調査を指示。
- 文部科学省
- 2001-2005年度に、森口が関わった2件の研究に総額約2,070万円を助成。東京大学等が調査中。
脚注
- ^ a b c 『日経産業新聞』2010年4月1日「ハーバード大研究員森口尚史氏――iPS細胞でがん治療(先端人)」
- ^ 東京大学先端科学技術研究センター二十年史 第2章(PDF:1.89MB)p.115
- ^ a b c d e iPS細胞:日本人研究者の「初の臨床応用」に疑義 - 毎日jp2012年10月12日(2012年10月12日閲覧)ミラー
- ^ a b 2012年10月15日、帰国後の本人による会見では辞意を表明したとしているが、東大側は当初聞いていないと回答、後に自宅待機の処分とした。- スポニチ 2012年10月16日 06:00:東大側「われわれも疑問」 森口氏は当面自宅待機
- ^ a b c 朝日新聞デジタル 2012年10月13日1時14分:「iPS臨床」の森口氏、資格は看護師 職を転々
- ^ iPS虚言の森口尚史氏は「100mを5秒で走れる」と嘘つく子供級(iza)およびiPS虚言の森口尚史氏は「100mを5秒で走れる」と嘘つく子供級(livedoorNEWS)
- ^ “「iPS細胞」で虚偽発表の森口尚史氏、その素顔は… 恩師も処分の対象へ”. 産経新聞. (2012年10月20日) 2012年11月18日閲覧。
- ^ iPS芸人?“虚言”森口氏タレント転身 - スポーツニッポン(2012年12月19日閲覧)
- ^ a b 読売新聞2012年10月11日夕刊1面
- ^ a b c “iPS臨床問題:指導教官も困惑 信じて「名義貸し」”. 毎日新聞 (2012年10月12日). 2012年10月12日閲覧。
- ^ 森口尚史 - 第一製薬(2012年10月12日閲覧)ミラー
- ^ a b c d e 森口尚史 - 東京大学先端科学技術研究センター研究者リスト[リンク切れ]ミラー
- ^ 「森口氏のiPS細胞臨床は事実無根…ハーバード大や傘下病院が全面否定」2012年10月13日06時10分 スポーツ報知
- ^ a b c d e 森口氏“医師免許はない”と説明変更NHKNEWSWEB10月12日 18時7分
- ^ 森口 尚史科学研究費助成事業データベース
- ^ 研究東京大学先端科学技術研究センター
- ^ “ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化 森口尚史”. 国立国会図書館. 2013年1月20日閲覧。
- ^ 東京大学学位論文要旨データベース検索
- ^ 森口氏関与の研究、内閣府調査
- ^ a b 森口氏“つい勢いでウソをついた” - NHK NEWS WEB 2012年10月14日(2012年10月14日閲覧)ミラー
- ^ 東大、森口氏を懲戒解雇 移植5件を虚偽と認定 - 日本経済新聞 2012年10月19日(2012年10月22日閲覧)
- ^ 英科学誌、森口氏の論文2本を撤回…著者も希望
- ^ a b “東京医科歯科大、平成22年の読売新聞報道を否定”. msn産経ニュース (2012年10月12日). 2012年10月12日閲覧。
- ^ a b “本社も2年前に森口氏の記事掲載 事実関係調査”. 日本経済新聞 (2012年10月12日). 2012年10月30日閲覧。
- ^ a b 読売新聞2012年10月11日朝刊1面「iPS心筋移植 初の臨床応用 ハーバード大日本人研究者 心不全患者に 2月に実施 機能回復」
- ^ 読売新聞2012年10月11日朝刊3面
- ^ 「死の間際、これしかなかった」iPS心筋移植。「iPS心筋移植」報道、事実関係を調査します
- ^ a b 「iPS臨床応用」日本人表明で混乱 米大学は否定 - 日本経済新聞2012年10月12日(2012年10月12日閲覧)ミラー
- ^ a b “Stem-cell transplant claims debunked”. Nature紙 (2012年10月12日). 2012年10月13日閲覧。
- ^ “英米科学誌も疑惑報道=森口氏「iPS移植」”. 時事通信 (2012年10月13日). 2012年10月13日閲覧。
- ^ “iPS移植”発表巡り異例の事態に - NHK NEWS WEB(2012年10月12日閲覧)ミラー
- ^ 読売新聞2012年10月13日朝刊[1](紙面と同内容のWEB記事)ミラー
- ^ iPS移植記事 読売新聞と共同通信“誤報と判断”
- ^ iPS報道、読売新聞が「調査」 共同、誤報認めおわび
- ^ iPS臨床問題:日本テレビが謝罪
- ^ 「iPS心筋移植」は捏造だったのか?なぜこんなに大きく報道されたのか?報道経緯を検証
- ^ 『朝日新聞』2012年10月13日
- ^ iPS臨床問題:日経、朝日にも売り込み 8月前半から
- ^ a b “森口氏の国助成事業、研究実態なしなら返金要請”. 読売新聞 (2012年10月26日). 2012年10月30日閲覧。
- ^ “iPS細胞移植虚偽発表 国から森口尚史氏に1,000万円近い報酬”. フジニュースネットワーク (2012年10月16日). 2012年10月30日閲覧。
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最終更新 2013年1月21日 (月) 16:56 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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