(2013年1月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
安倍晋三氏は12月に首相に就任した際、メッセージをふたつ中央銀行に届けた。ひとつは2%という明確なインフレ目標へと政策を移行すること。もうひとつは、その目標と整合性のある行動を取ることである。日本銀行が今週発表した政策修正は安倍氏の最初の要望にしか応えていない。
日銀の生半可な対応は残念なことだ。従来の0~2%という領域のインフレ目標はあまりにも保守的過ぎた。日銀の極めて臆病な金融政策が日本のデフレ長期化の一因だ。だが、目標を変更したからといってそれでインフレが生じるわけではない。日銀が新しい目標を守るとの強い姿勢を示さないなら、企業も消費者も現金を使わずに懐に抱え込み続けるだろう。
日銀は今回、即時に大胆な金融緩和に踏み切るべきだった。だが、新たな量的緩和の実施を2014年1月に延期した。また主に短期国債を買い入れの対象にすると発表した。それはこれまで効果がなかった戦略である。さらに、新しい目標を達成する具体的な時期を約束しなかった。当然、市場は懐疑的に反応した。円相場はドルとユーロに対して上昇した。
日銀の独立性を危惧する人たちは、日銀が安倍氏のすべての要望を受け入れなかったことに一安心している。その一人がドイツ連銀のイェンス・バイトマン総裁だ。彼は日本政府が金融政策に干渉していると批判したが、批判は的外れだ。財務相が金利を動かすようなことがあってはいけないが、中銀の金融政策が経済に有害であるときに政府が中銀と意見を交換することは適切だ。安倍氏がインフレを柔軟に受け入れる総裁を任命することも適切だ。
今後、安倍氏自身の責任がなくなるわけではない。日本が持続的成長に復帰するためにはサービス部門の規制緩和を進め、労働市場への女性の参加を増やさなければならない。膨大な債務の問題にも対処しなければならない。経済が弱くならない限り、予定通り消費税を15年までに10%へと今の水準の2倍に引き上げるべきだ。政治的には難しい課題だが、極めて重要だ。
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